西島秀俊の役への"没入の深度"を味わえる、"クズ男"を演じた映画「2/デュオ」

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そこまで完璧に近い関係性を構築できているのは、2人が即興で芝居をすることにより、自然と芝居に血が通い、瞬間瞬間のリアクションにリアルさが伴うからであろうが、何より2人の役への深い没入があってこそ成立している。この没入感が深いからこそ、役としてセリフと行動に血が通るのだ。

例えば、2人で雑談を交わすシーンなど、間を埋めるために「何?」「ん?─何?」「何?」と会話のキャッチボールのボールをする場面があるのだが、脚本では絶対に出てこない場面だ。同じセリフを互いに何度も言い合って次の話題を探すようなやり取りは脚本ではあり得ないことで、筋書きのない中での会話だからこそ出てくるもの。この"即興芝居だからこそ生まれるもの"を、2人が本当の恋人同士に成り切り現場で生み出していることに驚かされるし、しかもそれを20代半ばでやってのけていることに言葉を失ってしまう。

これほどまでに役への没入感が深いからこそ、西島の"クズ男"っぷりが絶妙にリアルなのだ。急に怒りだしたり、勝手に出ていったと思えば電話で謝ってきたりと、演じるのではなく成り切っているからこそ出てくるナチュラルさで圭を構築している。

2025年9月12日(金)に公開される最新映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』では、セリフの90%以上が英語という新たな挑戦の中で、息子の誘拐という悲劇に見舞われたことで互いの本音や秘密が露呈して妻との溝が深まる夫役を演じる西島。我慢して蓋をしていた感情があふれてしまい変化した関係性に振り回される役どころに深く没入していることだろう。最新作での演技にも通じているであろう、彼の"役への没入の深度"を"クズ男"役での絶妙なリアルさで堪能してみてほしい。

文=原田健

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放送情報【スカパー!】

2/デュオ
放送日時:2025年9月9日(火)21:30~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
西島秀俊、柳愛里、渡辺真起子、中村久美
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

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