北山宏光、6年ぶり主演舞台で実感する"役者としての変化" 令和に蘇る『醉いどれ天使』で挑む新境地
俳優
――松永を演じるにあたり、現時点で準備していることはありますか?
「まさに今、悩みながら模索しています。準備というよりは、自分が持っているスパイスを台本の上でどう活かせるかを探している感じですね。台本を変えるわけではなく、セリフの言い方や動きのニュアンスでオリジナリティをどう出していけるのか。僕がやる意味を見つけたいと思っています」
――模索中だと思いますが、現時点で「こう見せたい」というイメージはありますか?
「演出の深作さんと一緒に作っていくものなので、今の段階ではまだはっきりとは言えません。ただ、戦後の混沌とした時代、人々が荒々しく燃えるように生きていた中で、松永は"無骨だけど繊細"という人物だと思っています。そこに令和の今だからこそ、少し"艶"を加えてみたらどうなるのか。無骨さの中に艶っぽさがあるような松永を演じられたら、オリジナルのアプローチになるのかなと考えています」
――髪型やビジュアル面についても考えられているのですか?
「そうですね。髪型ひとつでも世界観を大きく左右すると思います。モノクロの世界観の中で、例えば土がついたような荒々しさを見せるのか、きちんと整えるのか。それだけでも印象は全く違いますから。過去のポスターなども見ましたが、時代とともに解釈が変わる面白さを感じています。その上でじゃあ自分が演じるならどうするかを考えることにワクワクしています」
――今回は共演者の方々も初めての方ばかりだと思うのですが、どんな印象ですか?
「ほとんど初めましてですね。会ったことがあるのは横山由依さんと阪口珠美さん、佐藤仁美さんくらいかな。岡田結実さんはお父さんと一緒にバラエティでご一緒したことがあって。実はみんなバラエティでしか会ったことがないんです(笑)。俳優として舞台でご一緒するのは初めてなので、そこがすごく楽しみですね。だって皆さん本職の方々だから、僕自身も新鮮な気持ちですし、きっと全然違う空気になると思います」
――渡辺(大)さんとは今回が初めてですか?
「そうですね。お会いしたことがないんです。役の関係性としてはバディ的な立ち位置になると思うので、年齢も近いですし、仲良くなれるといいなと思っています。どんな掛け合いになるのか、初対面だからこその新鮮さがあるんじゃないかな。第一声からすごく気になる存在です」
――演出を務める深作さんの印象についても教えてください
「ものすごくクリエイティブで物腰柔らかな方だなと思いました。一方的にこうだと押し付ける感じではなく、一緒にアイデアを出しながら作っていけるんだろうなと。もちろん深作さんの中にしっかりイメージはあると思うんですけど、その上で互いに寄り添いながら形にしていけそうで。そういう柔らかさに安心感がありますね。僕がこの『醉いどれ天使』をやる意味を、一緒に話し合いながら見つけていけるんじゃないかと思っています」
――先ほど「深作さんとアイデアを出し合いたい」とお話しされていましたが、北山さんご自身もそういうふうに作っていきたいタイプですか?
「理想を言えばそうですね。ただ、まとまらないこともあると思いますし、咀嚼の仕方が違ったりすることも多いので、まずは相手の意見を聞くことを大事にします。その上で自分はこう動いてみたいと提案することもあるかもしれないし、ないかもしれない。臨機応変にやっていきたいです」
――今回6年ぶりの主演舞台となりますが、この6年間でご自身の中で変わったと感じる部分はありますか?
「環境はもちろん変わりましたね。でも一番大きいのは台本の読み方です。以前はこのキャラクターはどういう生い立ちでと素直に理解して読んでいたのですが、今は"このセリフって嘘をついているんじゃないか"とか、"強がりなんじゃないか"と考えるようになりました。人間の感情は一つじゃなく、複雑に絡み合っているものだと前提にして読むようになったんです」
――そうした見方をするようになったきっかけはあるんですか?
「作品との出会いが大きいですね。『ただ離婚してないだけ』や『君が獣になる前に』などで、人間の感情がいかに複雑で単純ではないかを痛感しました。監督とお話しする中で人ってそんなに単純じゃないと気づかされて。そこから、役の裏側や矛盾も含めて読み取ろうとするようになりました」
――今年も幅広い挑戦が続いていますが、お仕事以外で挑戦してみたいことはありますか?
「バックパッカーです!若いうちじゃないとできない挑戦だと思うんですけど、ちょっと憧れがあって。実は20代の頃にインドへ行ったことがあるのですが、その経験がずっと心に残っているんです。もう一度インドに行きたいし、今度は東南アジアを巡って、西の方へ抜けていけたらいいなと。年を重ねた今だからこそ、これまでしてこなかった挑戦に憧れます」
――最後に劇場に足を運ぶ観客には、どんなふうに作品を受け取ってほしいですか?
「僕が思うのは、舞台を観終えて劇場を出て、電車に乗って、家に帰ってご飯を食べて寝るまで、ふとした瞬間にため息が出ちゃうような作品になればいいなということです。そのため息は決してマイナスではなく、余韻として残るもの。観た人それぞれが自分なりに感じたことを持ち帰れる、そんな舞台にしたいと思っています」
取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
公演情報
舞台『醉いどれ天使』
原作:黒澤明 植草圭之助
脚本:蓬莱竜太
演出:深作健太
出演:北山宏光
渡辺 大 横山由依・岡田結実(Wキャスト) 阪口珠美 / 佐藤仁美 大鶴義丹 ほか
公演スケジュール:2025年11月7日(金)~23日(日)
会場:明治座
公演スケジュール:2025年11月28日(金)~30日(日)
会場:御園座
公演スケジュール:2025年12月5日(金)~14日(日)
会場:新歌舞伎座
ヘアメイク/大島 智恵美
スタイリング/柴田 圭
衣装クレジット:
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