坂元裕二らしいセリフのオンパレード!松たか子松村北斗(SixTONES)の息の合った掛け合いも感動に誘う映画「ファーストキス 1ST KISS」

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「ファーストキス 1ST KISS」 (C)2025「1ST KISS」製作委員会
「ファーストキス 1ST KISS」 (C)2025「1ST KISS」製作委員会

三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」、野木亜紀子の「ちょっとだけエスパー」、岡田惠和の「小さい頃は、神様がいて」など挙げていてもワクワクするような屈指のヒットメーカーによる新作がずらりと並んだ、秋ドラマ。「脚本がこの人なら見る!」と脚本家に注目して映画やドラマを見る人も多いことと思うが、その筆頭でもあり、今最も新作が待たれる脚本家の一人と言えるのが、映画「怪物」で第76回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した坂元裕二だろう。

そんな坂元にとってカンヌ受賞後初となるオリジナル映画となるのが、「ラストマイル」などで知られる塚原あゆ子監督と初タッグを組んだラブストーリー「ファーストキス 1ST KISS」だ。10月18日(土)にWOWOWシネマで放送される本作は、ダブル主演を務めた松たか子と松村北斗が初共演にして夫婦役を演じたことでも話題になった。

主人公となるのは、結婚15年目に突入し、倦怠期で会話もない不仲な状態が続いているカンナ(松)と駈(松村)。夫婦の間に離婚話も出ていたある日、駈が事故で命を落としてしまう。しかしカンナは、ひょんなことからタイムトラベルする術を手に入れ、駈と出会った15年前の夏に到着。若かりし姿の夫ともう一度恋に落ち、15年後に事故死してしまう彼を救うことを心に決める。

松たか子と松村北斗が倦怠期だった夫婦を演じる「ファーストキス 1ST KISS」
松たか子と松村北斗が倦怠期だった夫婦を演じる「ファーストキス 1ST KISS」

(C)2025「1ST KISS」製作委員会

"ファンタジー"の要素を扱いながら、鮮やかな会話劇によって登場人物たちの日常と心情の移り変わりという"現実"を描き出していく坂元の手腕は圧巻。柿ピーを食べながら「君は柿ピーの柿が好きで、僕はピーナッツが好き。好みが違う僕たちは、生存法則上の必然性がある」と駈がカンナにプロポーズするシーンでは、彼の真面目で少し変わり者な性格を表しつつ、微笑ましい上に「なるほどな」と思わせるセリフをお見舞い。

「これ、僕の靴下だよね」と靴下を共有している様子からは2人の仲睦まじい生活が伝わるし、そんな彼らも次第に気持ちがすれ違い、「そんな目で見ないで」「ダメ?って聞くの、やめて」と衝突していく姿は真に迫り、思わず背筋が凍る。そしてタイムトラベルしたカンナと駈が再び恋に落ちていく過程は軽妙なやり取りにあふれ、ユーモアがありつつ、真理をつくようなセリフのオンパレード!坂元脚本作品の真骨頂をたっぷりと味わえる。

キュンもゾクリも、観客の心の奥底にまで沁みるものとして届けてしまうのだから、坂元の生み出すセリフはまるで魔法のよう。いつの間にかその世界にどっぷりと浸り、登場人物たちが大好きになってしまう。

カンナ役の松は、これまでもドラマ「カルテット」(2017年)、「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年)など数々の坂元作品に出演してきた、いわばミューズだ。坂元は「松さんといつか映画を作りたいと勝手に思っていた」と並々ならぬ信頼を寄せ、夫を救うために駆けずり回るカンナ役を松に託した。松が演じるカンナはどこまでもチャーミングで、人間らしく、「こんな松たか子が見たかった」と思わせてくれるようなキャラクターとして完成。

坂元作品に初参加となった松村は、駈としてオタクっぽさの香る、不器用な青年像を体現。ささやかな笑顔や体の動きからも、駈らしい優しさがにじむ。松村はスクリーンの似合う俳優だと確信するに十分な演技を見せている。また松、そして松村も15年前、15年後という時の流れを説得力と共に演じているのも凄い。2人の息の合った掛け合いが、見る者を感動的なラストへと連れていく。

すべてをまとめ上げた塚原監督。坂元と塚原監督は、エンタメ性とリアリティを見事に融合させるという点でも相性は抜群だろう。当たり前の日常が輝き、愛おしくなる。宣伝文句ではなく、心からそう思わせてくれる1作だ。

文=成田おり枝

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放送情報【スカパー!】

ファーストキス 1ST KISS
放送日時:2025年10月18日(土)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくは
こちら

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