"恋愛ドラマの神様"北川悦吏子が紡いだ平成の名作 妻夫木聡柴咲コウの繊細で巧みな演技力が光る「オレンジデイズ」

俳優

恋人の真帆は、沙絵に寄せる櫂の想いに気づき、ゼミの同級生で会社員になった佐野(柏原崇)と浮気してしまう。翔平は、派手に遊びながらも将来に不安を抱え、カメラマンの助手になるが「あいつは才能がない」と影口を叩かれて傷つく。実家が結婚式場という啓太は、家業を継がずに東京で就職しようとするが、父親が病気で倒れてしまう...。

登場人物たちは、それぞれ「自分の力ではどうにもならないこと」に直面して恋や人生に悩む。そんな深みのあるストーリーは単なる恋愛ドラマに終わらず、社会に巣立つ直前の大学4年の複雑な心情を鋭く描き出している。魅力的な若手俳優を配し、キラキラした青春ドラマという一面もあるが、じつは20代前半の若者特有の不安や葛藤を浮き彫りにする。「オレンジの会」と称する彼ら5人は、恋愛に対しては助け合うが就職に関しては、そうはいかない。就職競争に打ち勝つには、個人で挑むしかないからだ。それもリアルな現実である。青春時代は輝きばかりではない。青春の光と影をクールに描いたドラマである点も視聴者の心を打った。

また、当時人気絶頂だったMr.Childrenの楽曲がドラマの随所で流れ、特に最終話のクライマックスで「Sign」が流れる演出は感涙もの。詳細はあえて省くが、名場面なのでぜひ見てほしい。

■若き妻夫木と柴咲の繊細で巧みな演技力に感嘆!

聴覚障害というテーマを「不可抗力」の一つとして描いた点が秀逸で、コミュニケーションの壁をさりげなく描いた点も見事。近くにいれば手話が使えるが、遠くにいる相手を呼び止めることは非常に難しい。本作でも櫂が通りの反対側にいる沙絵を呼び止めようと、携帯電話を投げる場面がある。じつはここは後に重要な伏線となるのだが、聴覚障害を単純な泣きの要素にしていない点に好感が持てる。

さらに、何よりも若手時代の妻夫木聡と柴咲コウの演技が素晴らしい。妻夫木の感情表現が丁寧かつ細やかで、櫂の心情が痛いほど伝わってくる。セリフ回しも自然だし、声もいい。近年でも映画「ある男」で、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。NHKの朝ドラ「あんぱん」や映画「宝島」でもその演技を絶賛されているが、この頃から非凡な俳優であったことがわかる。

柴咲も難しい役どころを好演。手話で悪態をつく場面やセリフなしでも心情がしっかり伝わる、巧みな表現力は見事というほかない。数ある彼女の出演作の中でも、本作の沙絵役をベストワンに挙げる人も多いが、まさに彼女でしか成立しないと思えるほどのはまり役だ。成宮寛貴、瑛太、白石美帆といった俳優陣も健闘し、後の成長を予感させている。ちなみに、当時は無名だった田中圭が第8話に同級生役で出演しているのもレアポイントだ。

平均視聴率17.40%を記録したヒットドラマ「オレンジデイズ」は、「涙が止まらない」と多くの視聴者を感動させた紛れもない名作だ。当時の若者はもちろん、彼らの親世代も虜にした。平成の若者たちのリアルな葛藤や人間模様を描いた本作が、TBSチャンネル2で放送される。果たして令和の若者の目にはどう映るだろうか。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

オレンジデイズ
放送日時:2025年10月30日(木)・31日(金)18:00~
放送チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
出演:妻夫木聡、柴咲コウ、成宮寛貴、白石美帆、瑛太、小西真奈美、山田優、上野樹里、岡あゆみ、佐藤江梨子、沢村一樹、小日向文世、風吹ジュン ほか
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

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