本作は"闇が闇として存在し、政策が占いで決められていた平安時代においては、陰陽師は今でいう国家公務員のような存在であり、出世コースだった"というナレーションから始まる。そんな中、コネで「陰陽寮」に入ったとか、「狐の子」だと学生たちに陰口を叩かれているのが晴明だ。周りに挑発されて仕方なくやってみせた呪術をたまたま目撃したのが、雅楽家の博雅。その手腕に驚いた博雅は、自身のいとこで、伊勢神宮に仕えていた徽子女王を悩ませる怪奇現象を解決してもらおうと考え、再び寮に足を運ぶ。

しかし、晴明は貴族である博雅の頼みにあっさりと背を向け、驚愕の塩対応。博雅のことを「チャラチャラしていて上から目線だ」と言い放ち、呪術のことを「あれは呪をかけた」と博雅をからかってみせる。口角をあげてシニカルに笑う山崎の演技は、人を小馬鹿にしたような晴明の性格を絶妙に表現している。そこに博雅を演じる染谷の表情豊かで柔らかな芝居が合わさり、前半から名コンビ誕生の予感だ。

その生い立ちから心を閉ざし、"事実"と"真実"の違いについてクールに語ったりと論理的な晴明だが、やがて博雅に窮地を救われることに。そのことをきっかけに、2人の間に特別な感情が芽生えていく。

■奈緒と染谷が映し出すピュアな恋愛は、ファンタスティックな要素も満載

夜な夜な徽子女王を悩ませる現象を天才的な能力によって解決した晴明は、その勘の鋭さですぐに博雅の恋心に気づき、博雅は晴明にいじられるたびに動揺する。

そして、恋心を寄せられる徽子女王をチャーミングに演じた奈緒。身分の差ゆえになかなか踏み出せない博雅に苛立ち、涙で顔をクシャクシャにするシーンでは、その切ない恋愛を彩る幻想的で美しい映像美にも引き込まれる。

物語が進むと、ねたみや欲望が渦巻く「陰陽寮」の中で敵対視される晴明が、平安京を巻き込む「呪」と対決せざるを得なくなる展開も。舞うようなアクションと呪文で山崎が陰陽師としての新しい顔を見せる。山崎と染谷の阿吽の呼吸の演技にも注目しながら、令和に誕生した新たな安倍晴明と祓いの音を奏でる源博雅を楽しんでほしい。

文＝山本弘子