岡田将生の虚しさを帯びた雰囲気が絶妙!「アフター・ザ・クエイク」で体現する村上春樹的主人公像
俳優

(C)2025 Chiaroscuro / NHK / NHKエンタープライズ
村上作品の主人公といえば、人や社会との関わりを避ける、自己完結した孤独な人物が多いが、本作の小村も妻から「優しくて親切だけど、空気のかたまりと一緒に暮らしているみたい」と喩えられるように、社会や人を俯瞰的に眺めているような印象を覚える男だ。
理不尽に対してどうすればいいのか分からずにただ翻弄される様子など、岡田は抑制の効いた演技でキャラクターの閉じた人間性、空虚さを表現。感情を微かに顔に出しながらも、それでもどこか他人事といったような淡々としたが佇まいが絶妙で、岡田の掴みどころのなさも相まったハマり役と思える。
インタビューで「撮影が終わったにもかかわらず僕もまだすべてを理解できていない」と語っていた岡田だが、その戸惑いのようなものを演技に反映されており、自分の置かれている状況が理解できない小村の虚しい人物像に不思議と説得力をもたらしている。
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鳴海唯、堤真一の共演で、家で女性と焚き火が趣味の職業不詳の男との海辺での交流を描いた2011年。カルト宗教を信奉する母子家庭で"神の子ども"として育てられた青年、父と思しき男を追いかけていく様を渡辺大知主演で描いた2020年。そして佐藤浩市扮する漫画喫茶暮らしの警備員が、巨大な蛙の姿をした"かえるくん"と、地震から東京を救おうとする2025年...と、「アフター・ザ・クエイク」は豪華俳優陣の共演で難解な物語が映像化されている。
試行錯誤を繰り返した俳優たちの熱演や原作からの大胆なアレンジによって浮かび上がる、ファンタジーとリアリティの狭間のような村上春樹ワールド。作品が何を描いているのか、深く考えたくなるような魅力を味わいたい。

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文=HOMINIS編集部
映画情報
アフター・ザ・クエイク
2025年10月3日(金)公開
詳しくは
こちら