舘ひろしが定年退職後のサラリーマンをチャーミングに好演!妻役・黒木瞳との息の合ったやり取りも痛快な「終わった人」

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(C) 2018「終わった人」製作委員会

舘ひろしが主演、定年退職を迎えた元エリートの銀行マンを演じ、黒木瞳と久しぶりに共演したヒューマンコメディが「終わった人」(2018年)だ。原作は脚本家として多くの人気ドラマを手がけてきた内館牧子の小説で「リング」シリーズなどで知られる中田秀夫がメガホンをとった。

舘の代表作といえば「西部警察」や「あぶない刑事」で"刑事"役のイメージが強いが、本作で演じているのは"定年"というひとつの終わりを迎え、何をしていいかわからず、暇を持て余す田代壮介。「刑事貴族」など舘との共演回数が多い黒木が美容師として働く妻・千草を演じている。

ダンディなイメージが強い舘がコミカルな役を演じるのは珍しいが、新垣結衣と共演した入れ替わりドラマ「パパと娘の七日間」で中身が女子高生のサラリーマンを演じ、後に令和版が制作されるほど大ヒットしたことを思い出す人も多いだろう。

本作でも壮介は「パパ」と呼ばれているが、やはり舘には「お父さん」ではなく「パパ」が似合う。会社を辞めて昔話ばかりしている壮介に嫌気がさしている千草との掛け合いも昭和世代の夫婦あるある。舘と黒木の息の合ったコンビが痛快であり、定年退職を経験した人たちにとっては身に染みるエピソードも盛り沢山だ。

■妻にも相手にされない主人公を舘が哀愁たっぷりに演じる

(C) 2018「終わった人」製作委員会

大手の銀行で支店長を経験するも、出世レースに負け、関連会社に出向になり、定年を迎えた壮介は社員たち総出で送り出され、家に帰れば妻や娘、孫たちが御馳走を用意し、クラッカーでお祝い。みんなから、これからはゆっくり休むように言われ、複雑な気持ちになる。

そんな壮介はよかれと思って千草に温泉に行きがてら故郷の盛岡に行かないかと提案するが、美容院が繁忙期なこともあり、喜ぶどころか「(仕事が)落ち着いたら1泊ぐらい付き合うわ」とアッサリ。かくして"終わった人"壮介"の迷走の日々が始まっていく。

時間をもてあまし千草の美容院に車で迎えに行くものの、迷惑がられ、公園のベンチに座っていると周りは暇そうなシニアばかり。気分一新、ジムに行ってみるものの、昼に身体を鍛えているのはやっぱり高齢者。道で偶然会った学生時代のラグビー仲間が今も夢を持っていることを知って、冴えない自分と比べてますます生気を失っていく。

そんな壮介にイラつき、「いい加減、現実を受け入れて」と言い放つ千草。妻がキッチンから出ていった後に小さく「こわっ!」と呟きながら、うどんを食べる演技が実に愛らしく、ポンコツなおじさんを演じてもチャーミングな人柄がにじみ出ているのは舘ならではだ。

■ロマンティストな夫とリアリストな妻の夫婦の行く末は?

(C) 2018「終わった人」製作委員会

千草に相手にされない壮介はハローワークで仕事を探したり、カルチャースクールに通うことにしたりと孤軍奮闘。そんな日々の中、偶然の出会いが重なり、壮介は同じ盛岡出身でカルチャースクールの受付として働く浜田久里(広末涼子)に恋をする。

天然で思わせぶりな久里と会話を交わすようになって壮介は家に帰るとクッションを抱きしめて乙女のように有頂天。娘には呆れられるも、もしも本気で恋をしたら?という問いかけに千草は振り向いて「見直す」とひとこと。壮介がロマンティストなら、千草はリアリストであり、サバサバしているが、長年連れ添った夫を誰よりも理解している聡明な妻を黒木がキレのある演技で魅せる。

会社に捧げた人生は終わったものの、壮介を待っていたものは新たな出会いと再会や冒険。本人がそれに気づいていないため、主人公の人生を俯瞰で見ている気持ちになる本作は舘と黒木の阿吽の呼吸の演技でより味わい深いものとなっている。

文=山本弘子

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放送情報【スカパー!】

終わった人
放送日時:2025年11月1日(土)21:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
出演:舘ひろし、黒木瞳、広末涼子、臼田あさ美、今井翼、田口トモロヲ、笹野高史、ベンガル、中田秀夫、根本ノンジ
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

詳しくは
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