岡田将生が秀逸な演技で、気だるそうな青年が熱をまとっていく変化を表現!監督・塚原あゆ子×脚本・野木亜紀子による話題作「ラストマイル」

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(C)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

孔は物語の最初、繁忙を極めるセンターを尻目に、ロビーの長椅子で疲れ切ったように座っている姿で登場する。そこへ着任したばかりのエレナが来るのだが、会話する孔の声は実務的で覇気が感じられず、ロッカーの前では飲み終えたカップをゴミ箱に放り投げたりと、うっ屈としたものを抱えているような印象を受ける。

ブラックフライデーのために疲れ切っているようにも思えるが、彼自身の言葉を借りれば「特に人生にときめいてない」ことも理由のようだ。確かに、爆発事件が起きて警察が捜査に入ってからも、どこか人ごとのよう。ソファにもたれて気だるそうにスナック菓子をかじったり、電話をしているエレナを横目で見ながらハンバーガーを頬張ったり、常に冷めている雰囲気がある。

しかしある時点から、孔の言動が熱を帯びるようになる。PCを見ていたエレナがネットで謎の広告を見つけた時、孔は心の奥から何かが湧き上がってくるような空気をまとって、エレナの横に行って一緒に広告を見つめる。そして、それまでになかった勢いで警察に言おうと言い、挙げ句、エレナとの口論にまで発展する。それからの孔は、物語はもちろん、映像の中での存在感も格段に高まり、要所で印象深いシーンを作り出す。一刻を争うメディカル便の発送状況を調べる時は頼れる雰囲気だし、エレナが絶体絶命の危機を乗り切った後には、かすかに心を許したような笑顔も見せる。

そういった場面での岡田の演技は、表情の変化だけでなく、シーンと孔の心情に合った空気がしっかり出ているし、持ち前の風貌もあってつい引き込まれるシーンとなっている。

■セリフなしでも、雰囲気で伝える岡田の演技

(C)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

セリフのないシーンでの岡田の演技も、本作での注目ポイントだ。爆弾についてエレナと語るシーンでは、恐ろしい方向に推理を進めるエレナを怖いものでも見るような様子で見つめ、PCで情報を探るシーンでは、不安げにあたりを見回すだけでなく、張り詰めたような緊張感が漂っている。

孔の心情が雰囲気で伝わってくる岡田の演技は絶妙だし、それができるから、セリフがなくとも強く引かれる印象的なシーンが作れるのだろう。

物語は二転三転するだけでなく、伏線も数多く張り巡らされていて、非常に濃いものとなっている。岡田はもちろん、主演・満島の演技も素晴らしく、時が経つのを忘れて見入ってしまう作品と言えるだろう。

文=堀慎二朗

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放送情報

ラストマイル
放送日時:2025年11月29日(土)21:00~、12月19日(金)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

出演:満島ひかり 岡田将生 ディーン・フジオカ/大倉孝二 酒向芳 宇野祥平 安藤玉恵 丸山智己 火野正平 阿部サダヲ

詳しくは
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