真面目なリクを河川敷のコミュニティに引き入れた張本人が、桐谷美玲演じる自称・金星人のニノ。桐谷美玲が演じるニノは、終始ジャージ姿というスタイルでありながら、美少女としての輝きを隠せない。彼女の行動原理は地球の常識とは別次元にあり、その言動は常にピュア全開で予測不能である。美貌と常識外れの行動のコントラストこそが、ニノというキャラクターの持つ唯一無二の魅力である。

子供のような純粋さや天然さで、恋人であるリクを時に翻弄するニノの姿は、作品の恋愛コメディー要素を牽引し、観る者を彼女の不思議な魅力で引きつけていく。彼女の超ド級の美少女っぷりはまさに"金星"の名に恥じない圧倒的な説得力となっているのだ。

■小栗旬は「村長」役をコミカルに体現

河川敷のコミュニティを統率する村長役として、全身緑の河童の着ぐるみを着た姿で出演するのは小栗旬である。彼が本作への出演を直談判したというエピソードは、この異様な役柄への並々ならぬ情熱を物語っている。念願の村長役ということで、彼は全身全霊、めいっぱいギャグをぶちかましており、その姿はコミカルを通り越し、凄味すら感じさせる。

現在では所属事務所の社長業や監督業もこなす小栗だが、彼は本作で「星」役に山田孝之を推薦しており、単なる俳優としてだけでなく、作品全体の制作に対しても深く興味を持っていたことがうかがえる。全身緑の滑稽な河童というビジュアルにもかかわらず、彼の口から飛び出すのは、時に人生の真理を突くような"名言"であり、そのギャップが村長というキャラクターに不思議なかっこよさと貫禄を与えている。

本作は、ただ面白いコメディーではなく、シュールな笑いの真髄を追求している点に特徴がある。豪華俳優陣が、その演技力を最大限に活かし、真剣にギャグシーンを楽しみ、全力でふざけているのだ。彼らの真摯な姿勢が、キャラクターたちの奇妙な言動にリアリティと説得力を与え、笑いの質を極限まで高めている。

さらに、物語は単なる笑いで終わらない。リクとニノの恋のジレンマや、リクと彼の父との間に横たわる親子の確執といった普遍的な人間ドラマの要素も丁寧に描かれている。そして、これらの人生の障壁が、ヘンテコな住人たちとの触れ合い、すなわち「荒川アンダー ザ ブリッジ」ならではの価値観とコミュニティの力によって、ユーモラスかつ温かくクリアされていく。この構成こそが、観客に深い共感と満足感をもたらす。この映画は、豪華なキャスト、徹底されたギャグ、そして心温まるドラマが融合した、まさに極上のエンターテインメントである。

文＝石塚ともか