寺尾聰松坂桃李の名演技が"家族の絆"を切実に描き出す!映画「父と僕の終わらない歌」

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寺尾聰と松坂桃李が親子役を好演した、心温まるストーリー
寺尾聰と松坂桃李が親子役を好演した、心温まるストーリー

(C)2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会

物語は、雄太の幼馴染の結婚式から始まる。哲太は常に陽気で、ジョークも大好きな男で、レトロな車を転がして駅に雄太を迎えに行く。車内でのやり取りでは、ぶすっとした雄太に「スマイルさん!」と語りかけたり、近道するために狭い商店街に車を乗り入れたりもする。少しハメを外すところがありつつも、哲太から常に温かな空気と無邪気な雰囲気が滲み出ているのは、寺尾が哲太という人物にしっかりなりきっているからだろう。

しかし、結婚式が終わり、雄太を駅まで送った後、様子がおかしくなる。何かに怯えたような、驚きと焦りが入り混じったような表情で、「うち、どこだっけ?」と雄太に問いかけるのだ。そして病院で、哲太は初期のアルツハイマー型認知症と診断される。陽気な哲太は当初、あまり気にしていないが、徐々に症状は彼の脳を蝕んでゆく。免許を返納したことを忘れて配達に行こうとしたり、ギターの修理を頼んだ女の子の顔を覚えていなかったり、そのたびに哲太は驚いたような顔になったり、戸惑うような口調になったりする。

陽気な雰囲気を残しつつも、記憶がないため周囲と噛み合わない様子は、見ていて胸が詰まりそうになる。「なんとかならないのか...」とつい思ってしまうのは、寺尾が説得力のある演技で、哲太を印象的な人物に仕上げているからなのだろう。

■父の病に振り回されながらも、"家族の絆"を失わない雄太を松坂桃李が好演

松坂が演じる息子の雄太は、人の良い好青年といった印象だ。冒頭の車内では、陽気にはしゃぐ哲太に呆れつつも真面目な雰囲気があるし、結婚式では、初対面の新郎とのユーモラスなシーンがあったりと、明るい性格であることもうかがえる。

しかし、哲太の病状が進むに従い、深刻な表情が増えていく。ネットで認知症について調べ、完治させる方法はないと知って絶望の色を浮かべたり、哲太が突然、荒れるようになり、家を散らかし始めた時には声を震わせて対峙したり、雄太の切実な心情が手に取るように伝わってくる。そんな雄太の姿からは家族への想いが強く感じられ、哲太に振り回されながらもその想いを保ち続ける雄太もまた、松坂の演技によって魅力ある人物に仕上がっていると言えるだろう。

そして、そんな2人が車内で仲良く歌うシーンや、ラスト近くで哲太が息子への愛を語るシーンは、心が温まると同時にホロリとしてしまう名場面となっている。寺尾と松坂、2人の名演があればこそ、本作はかけがえのない"家族の絆"を、深く、濃く伝えてくれる物語になったと言えるだろう。

文=堀慎二郎

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