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事件は荒川区にある高層マンションで起こる。落下死した男性は、遺体の損傷が激しく、身元不明。管理人も「住民なのかわからない」と語る状況の中、2025号室の前から血痕が見つかる。吉田たちが部屋の中に入ると、そこには家族と思われる3人が、何者かによって殺害されていた。警察は犯行時刻にマンションのエレベーターの監視カメラに映っていた中年の男(杉本)と、赤ちゃんを抱いた若い女性(吹石)に目をつける。しかし、2025号室で殺された3人がそこに住んでいた家族ではなく、管理人も知らない、"砂山"と名乗る一家と発覚し、事件の謎はさらに深まっていく。「あの死体たちは一体、誰なんだ?」とため息をつく吉田は、難航する捜査の中で、さまざまな人たちが抱える家族の問題や愛情に触れることとなる。時に先走りしそうになる立花を静かに制止するベテラン刑事を演じる寺尾は、穏やかな口調と慈愛をたたえた瞳で相手をじっと見つめ、多くの人から、それぞれが心に秘めていた想いを引き出す。そして、相手が発する言葉が吉田の心に刺さっていることを表情ひとつで表現している。観る人の想像力を掻き立てる演技と、人生を重ねたからこその深い味わいは寺尾ならではだ。
■刑事でありながら、ひとりの父親でもある...その狭間での葛藤を奥深い芝居で表現
優秀な刑事である一方、吉田は家族を犠牲にしたという深い後悔と共に生きてきた人物として描かれている。ひとり娘の美穂(香里奈)が車椅子での生活を余儀なくされたのも、事件に巻き込まれたことが原因。大人になった美穂は、父に結婚を考えている彼氏・和也(福士)を紹介するが、負い目を感じているからこそ、「娘に幸せになってほしい」と願う吉田の態度は硬化。仏の刑事とは全く違う顔を見せ、横目で和也を見て、思わず声を荒げてしまう。そんな私生活でもターニングポイントを迎えたタイミングで、吉田は偶然にもさまざまな形の家族が絡む事件と対峙することになるのだ。
マンションから落下した男と殺害された偽家族の正体、そして監視カメラに映っていた男と女は事件にどう関係しているのか――。ミステリーとヒューマンドラマを同時に描いた本作の行方を、寺尾の渋い芝居と共に見届けてほしい。
文=山本弘子







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