阿部寛がプライドを砕かれる専業主夫を好演!コミカルな芝居に注目のホームドラマ「アットホーム・ダッド」

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阿部寛がエリート意識と現実の板挟みになる新米専業主夫を演じるドラマ「アットホーム・ダッド」
阿部寛がエリート意識と現実の板挟みになる新米専業主夫を演じるドラマ「アットホーム・ダッド」

彫りの深い端正な顔立ちに190cm近い長身。「テルマエ・ロマエ」のローマ人ルシウスや、「VIVANT」の野崎守のように、どこかスケールの大きい役がよく似合う阿部寛。そんな阿部が、慣れないエプロン姿で洗濯物と格闘し、近所付き合いにも戸惑いながら悪戦苦闘していた時代があったことを、覚えている人はどれくらいいるだろうか。しかも一度や二度ではない。全12話プラスSPの間ずっと、である。長身を持て余すように狭い台所でおろおろする姿は、それだけで一種のシュールな絵になっている。7月30日(木)にフジテレビTWOで放送されるドラマ「アットホーム・ダッド」は、そんな"意外な阿部寛"にたっぷり出会える作品だ。

2004年にフジテレビ系「火曜22時」枠で放送された本作は、突然のリストラをきっかけに、エリート意識の強い亭主関白サラリーマン・山村和之が「専業主夫」に転身するというホームコメディー。CMディレクターとして働き、念願のマイホームまで手に入れて絶好調だった和之だが、職人気質が災いして会社を辞めざるを得なくなる。折しも妻の美紀(篠原涼子)にはもう一度働かないかという誘いが舞い込み、家計のため、美紀が働き和之が家事と育児を担うという逆転生活が幕を開ける。専業主夫なんて男の風上にも置けないと公言していた和之にとって、それは自らの価値観を根本から覆される屈辱的な決断でもあった。専業主夫の先輩・優介を演じた宮迫博之、和之の友人・健児役の永井大ら個性豊かな脇役たちも物語を彩り、放送当時は「オレンジデイズ」「愛し君へ」に次ぐ視聴率16%台を記録。20年以上が経った今も色褪せない先見性で語り継がれる一作だ。

見下していた隣人の専業主夫・優介に頭を下げてまで家事を教わるところから、和之の"修行"は始まる。慣れない手つきで卵を焦がし、洗濯物の色移りに頭を抱え、掃除機ひとつまともに使えない自分に愕然とする。スーパーの特売情報や値引きのタイミングすら知らず、買い物ひとつで右往左往する姿は、かつてのエリート然とした佇まいとの落差が大きいほど笑いを誘う。近所付き合いの作法もわからず、それまで培ってきたエリート意識をへし折られながら、生活の些細な失敗を積み重ねてボロボロになっていく和之。その過程を、阿部は誇張しすぎない絶妙な力加減でコミカルに演じてみせる。プライドの高い男ほど惨めに転げ落ちるさまが面白い、というコメディーの王道を体現した芝居だ。

地味な失敗を重ねるうちに、和之の中で何かが変わり始める。かつて見下していた優介を"先輩"と慕うようになり、家事という仕事に不器用ながらも本気で向き合い始める和之の姿には、阿部本来の生真面目さが透けて見える。娘の理絵との距離が少しずつ縮まっていく描写や、働きに出た美紀が新しい生きがいを見つけていく姿と並走させることで、単なる立場の逆転劇では終わらせない厚みが生まれている。それまで会社人間として家庭を顧みてこなかった和之が、理絵の些細な変化に気づけるようになっていく過程は、専業主夫としての成長そのものでもある。

人材派遣会社を経営する妻に支えられ、悠々と主夫業をこなす優介が身近にいることも、和之の不器用さを際立たせている。同じ専業主夫でも、優介は自然体で家事を楽しむ一方、和之は戸惑い、失敗を重ねながら少しずつ自分の役割を見つけていく。終盤、主夫としての生活に本気で向き合い始める和之の表情には、コメディーだけでは片づけられない説得力がある。滑稽な姿の奥に、ささやかな成長が丁寧に描かれているからこそ、このドラマは笑うだけで終わらない作品になっている。

7月からは日曜劇場「VIVANT」の続編がスタートし、昨年配信されたNetflix「イクサガミ」もシーズン2の制作が決まるなど、今なお第一線を走り続ける阿部寛。凄みのある表情で野崎守を演じる、あの阿部からは想像もつかない、洗濯物と悪戦苦闘する20年以上前の姿がここにある。スケールの大きなヒーローも、腹に一物抱えた悪役も、そして冴えない専業主夫も。シリアスにもコメディーにも本気で振り切れる。そのギャップの広さこそが、阿部寛という俳優の底力なのだろう。

文=川崎龍也

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