王子様なジュリーに会える!?アイドル映画で発揮される沢田研二のカリスマ性

「アイドル映画」と聞いて、どの作品を思い浮かべるだろうか?原田知世の『時をかける少女』(1983年)、広末涼子の『20世紀ノスタルジア』(1997年)、モーニング娘。の『モー娘。走る!ピンチランナー』(2000年)、AKB48のドキュメンタリー『DOCUMENTARY of AKB48』シリーズ(2011年〜)...と、青春時代を過ごした時期によって、この問いには世代ごとに様々な回答があるはずだ。

アイドル映画の定義は難しいが、前述の映画たちよりも少し前の"70年代アイドル映画"を考えるにあたって、沢田研二の存在は外せない。当時、熱狂的な人気を誇った"ジュリー"は、TVやコンサートだけでなく、映画俳優としてスクリーンで特別な輝きを放っていたひとりだ。

「虹をわたって」

(C)1972松竹株式会社

ザ・タイガース解散後の初主演作となる『炎の肖像』(1974年)では、人気アイドルらしからぬ過激なシーンにトライ。"ジュリーの愛称で親しまれるロック歌手"という役柄、沢田のインタビューやライブ映像が差し込まれる構成など、虚構と現実がないまぜになった作品だ。後に多くのフォロワーを生むことになる傑作『太陽を盗んだ男』(1979年)では、原子力発電所からプルトニウムを盗み出し、自らの手で原爆を完成させる男を見事に演じ切った。沢田がこの映画で作り出した"虚無のアンチヒーロー"像は、今見てもまったく色褪せない。一度見たら忘れられない悪役・天草四郎を色気たっぷりに演じた『魔界転生』(1981年)も代表作のひとつ。スーパースターでしか成立しないこの役、沢田を差し置いて他に誰が演じられただろうか...?

それらの作品以前に沢田が出演した映画に『虹をわたって』(1972年)がある。天地真理が初主演した人情喜劇テイストの青春映画で、その主人公は、父の再婚に納得できず、家出した少女・マリ(天地)。貧しいが個性的で憎めない連中が集まっているダルマ船で暮らし始めたお嬢さま育ちのマリが、未知の世界に触れながら、騒動の末に父の元に帰るまでを描く。

沢田の登場は物語の後半。小さなヨットに乗って現れる昭夫(沢田)は見るからに爽やかな青年で、すぐに周囲の女性たちをメロメロにしてしまう。マリとも次第に距離を縮めていくが、昭夫は王子様のようにキザでかっこいい言動を連発。国民的アイドルだった天地の可愛らしさを全面に押し出したアイドル映画のはずが、自身のソロデビュー楽曲「君をのせて」も劇中でちゃっかり弾き語るなど、主役を食う勢いで"ジュリー力(りょく)"を発揮している。スクリーンからその存在が3Dのように飛び出してくるのは、沢田のカリスマ性があってこそだろう。

「虹をわたって」

(C)1972松竹株式会社

未だにソフト化されていない『虹をわたって』だが、衛星劇場の特集企画「僕らの青春70's~スクリーンのアイドルたち~」の1本として1月2日(火)に放送される。森田健作、水谷豊、高岡健二、吉沢京子、桜田淳子、西城秀樹ら人気スターが共演した『ひとつぶの涙』(1973年)、郷ひろみと樹木希林が絶妙なコンビネーションを見せる『ワニと鸚鵡とおっとせい』(1977年)など、懐かしのアイドルたちの瑞々しい姿が確認できるこの特集で、"一瞬の輝き"が映像に閉じ込められているアイドル映画の魅力に触れてほしい。

文=HOMINIS編集部

この記事の全ての画像を見る

放送情報

虹をわたって
放送日時:2019年1月2日(水)10:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物