2018年12月のクリスマス前。「仮面ライダー」ファンから嬉しい悲鳴が上がった出来事を、皆さんはご存知だろうか。この時、映画館では「平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER」が全国公開され、「仮面ライダー電王」でイマジンを演じた声優・関俊彦や遊佐浩二が同作に出演。さらに人気俳優へと成長した佐藤健が、野上良太郎/U良太郎をサプライズで約10年ぶりに演じ、ファンならずとも大きな注目を集めたのだ。
佐藤健は映画界、ドラマ界から数多のラブコールを受ける人気俳優だが、その始まりは原宿でのスカウトだった。そして2006年にドラマ「プリンセス・プリンセスD」で俳優デビュー作ながら準主演を務めると、翌年2007年には「仮面ライダー電王」(テレビ朝日系)でドラマ初主演を飾った。「仮面ライダー電王」での佐藤は、俳優2年目にも関わらず同作の中で主人公・野上良太郎の他にも役を務める、"一人多役"に挑戦。先述した関らが演じるイマジンと呼ばれる精神体が憑依した姿を、表情や仕草だけで演じきった。
その佐藤が銀幕デビューを果たした主演作が、「劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!」(東映チャンネルにて4月21日(日)放送)だ。本作は宝石泥棒に憑依したイマジンを追って、良太郎たちが過去へとタイムトラベル。しかしそれは、時を越える列車「デンライナー」を奪うために仕組まれた罠であり、さらに良太郎は今まで電王として戦っていた記憶をなくしてしまう。一行は首謀者・牙王の企みを阻止すべく、いくつもの時を越えるが、ついにすべての時間を支配できるという"神の列車"の封印が解かれてしまう、という展開だ。
この演じ分けは、俳優2年目の佐藤にとって厳しくも得がたい経験だったに違いないだろう。というのも、「電王」で挑戦した"一人多役"は演じる人物像の幅が広く、ここで得た経験はのちの佐藤に強く影響を与えたと思うからだ。例えば、主人公・野上は臆病かつ引っ込み思案で揉め事が嫌いな性格の持ち主だ。しかしイマジン・モモタロス(声:関俊彦)が憑依すると、一転して短気で好戦的な性格へと変貌を遂げる。その憑依した姿においては、声は関俊彦が演じ、佐藤はセリフなしの表情や仕草だけで、性格を表現しなければならなかった。さらに佐藤はTVシリーズにおいて計7体にも及ぶ、個性豊かなイマジンを約1年の歳月をかけて演じきった。そのように「電王」で培った役への理解力は、その後出演した大河ドラマ「龍馬伝」(NHK総合)や映画「るろうに剣心」シリーズ、「連続テレビ小説 『半分、青い。』」(NHK総合)へと受け継がれていると言えるだろう。
2019年3月21日に30歳を迎え、俳優としても1人の男性としてもさらなる成長が期待される佐藤。この節目の機会に今一度佐藤の初期作品を見つめ直し、彼のこれまでの成長。これからの成長に思いをめぐらすのも、佐藤が持つ魅力の秘密に近づく1つの手段なのではないだろうか。
文=椋鳥
放送情報
劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!ファイナルカット版
放送日時:2019年4月21日(日)13:30~
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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