佐藤健の訴えかける目に引き込まれる!阿部寛の深みのある演技にも注目の映画『護られなかった者たちへ』

東日本大震災の理不尽さ、生活保護の不条理な現状、何を憎めばいいのか分からない現実――そんな中でも人は生きていくという力強いメッセージを発して好評を得た映画『護られなかった者たちへ』。ベストセラー作家・中山七里の同名小説を、「64-ロクヨン-」の瀬々敬久監督が映画化。今の社会のあり方を考えさせる重厚なサスペンスミステリーである本作は高く評価され、第46回報知映画賞、第76回毎日映画コンクール、第45回日本アカデミー賞など、数々の映画賞を受賞した。

(C)2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会
(C)2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会

東日本大震災から9年が経った宮城・仙台で、全身を縛られたまま餓死させられるという連続殺人事件が発生。被害者は周囲から人格者と評される善人たちだった。刑事の笘篠(阿部寛)が捜査を進めるうちに2人の被害者の共通点を発見する一方で、過去に知人を助けるために放火事件を起こした元模範囚の利根(佐藤健)が容疑者として浮上。利根が犯人であるという決定的な証拠が掴めない中で、利根の過去や事件に隠された切ない真実が明かされていく。

実写版「るろうに剣心」シリーズで日本映画界に確かな足跡を残した佐藤健が、今作では追われる身となる元模範囚を好演。以前に瀬々敬久とタッグを組んだ「8年越しの花嫁 奇跡の実話」では好青年を演じたが、今回は自身の新境地となる容疑者役に挑戦することになった。利根は一度事件を起こし、服役したが、その罪は知人を助けるために犯したもの。単純な悪人ではなく、心の傷と複雑な事情を抱えながら生きる青年を見事に演じきり、重厚な人間ドラマを支える要となっている。寡黙で誰も信用しないかのような鋭い目つきの奥に、自分なりの正義と激しいエネルギーを秘めている利根。そんな利根を目で訴えかける演技や体当たりの熱演で表現した佐藤は、本作で毎日映画コンクール男優主演賞、日本映画アカデミー優秀主演男優賞を受賞した。

(C)2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会

刑事の笘篠役を演じる阿部寛は、佐藤との共演は『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』以来、実に10年ぶり。追う者と追われる者としての再会となったが、彼らの演技対決も見どころだ。阿部が演じる笘篠はこだわりが強く、県警内では変わり者として扱われている男。しかし突飛な人物ではなく、彼もまた震災によって大切な人を失い、癒えない傷を抱えている。阿部の演技もやはり、言葉にならない感情を抱えているかのような瞳で語る演技が印象的だ。本作はセリフで説明するよりも行間に物語を漂わせるような演出が取られているが、阿部の名演がその演出としっかり噛み合い、作品にさらなる深みを与えている。

震災がテーマの作品は多く存在するが、本作はそこに生活保護の実態というもう1つの軸を加え、護られなかった者たちと大切なものを護れなかった者たちの物語を紡いでいる。原作の中山七里が"どんでん返しの帝王"という異名をとるだけに、ミステリーとしても予想のできない結末が視聴者を待ち受けていることだろう。理不尽と言葉でいえば容易いが、その意味するところを134分かけて肌身で痛感させられる社会派ミステリーに仕上がっている。佐藤や阿部をはじめ、名優たちが体現する人々の境遇に心を寄せながら鑑賞してもらいたい。

文=本永真里奈

この記事の全ての画像を見る

放送情報

護られなかった者たちへ
放送日時:2022年11月5日(土)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物