味方良介今泉佑唯ら4人の"舞台人"で紡ぐまったく新しい『熱海殺人事件』

3月28日から大阪と東京で上演された舞台『熱海殺人事件 LAST GENERATION 46』が、5月25日(土)にTBSチャンネル1で放送される。

『熱海殺人事件』といえば舞台好きならもちろん、舞台に明るくない人でもタイトルは知っているという超有名作品で、演劇界の巨匠・つかこうへいの代表作。1973年に文学座に書き下ろされた同作は最年少で岸田戯曲賞を受賞し、東京・新宿の紀伊國屋ホールを拠点に何度も再演を重ね、「東京の春の風物詩」とも呼ばれるほど。今回で46年目を迎え、平成最後に「LAST GENERATION 46」と銘打ち、フレッシュなメンバーで上演された。

ストーリーは、主人公の刑事・木村伝兵衛が静岡・熱海で起きた殺人を、自分好みの大事件に仕立てようとするもので、木村の傍若無人な言動に、木村の愛人で部下の婦人警官・水野朋子と地方からやってきた新任のベテラン刑事・熊田留吉、犯人の大山金太郎が振り回されていく。

これまで三浦洋一、風間杜夫、阿部寛といった名だたる俳優陣が演じてきた木村役を、2017年に史上最年少の24歳で同大役を演じ、今作で3年連続となる味方良介が熱演。また、捨て身の潜入捜査を行う水野役を、2018年に欅坂46を卒業後、今作が本格的な女優デビュー第1弾となる今泉佑唯が演じた。犯人の大山役では、新鋭ダンスボーカルユニットlol--エルオーエル-の佐藤友祐が俳優として新境地を開き、富山からやってきた熊田を、昨年同様、演技にも定評があるNON STYLE・石田明が演じた。

東京公演の直前に、味方が「元アイドルを見るのではなく、芸人を見るのではなく、アーティストを見るのではなく、"演劇"をきちんと見てもらいたい」とアピールするほど、幅広いジャンルから集まったキャストたちに目がいきがちだが、幕が上がると4人の"舞台人"によるまったく新しい『熱海殺人事件』が展開される。

それぞれの存在感、舞台上での立ち居振る舞い、観客を取り込む空気感などは目を見張るものがあり、中でも、集中力が途切れると聞き逃してしまうほどの速い台詞回しは圧巻で、例えるなら16ビートの楽器の4重奏。その台詞回しが主要キャストが4人という少なさを全く感じさせないそれぞれの存在感の一助となっており、全編を通して観る者の注意を舞台上に引き付け続ける。もちろん、1人の台詞の後にもう1人の台詞が予定調和のように続くのではなく、芝居として相手の台詞を受けた上で発言しているため、違和感はなくなんとも心地がいい。

また、4人が奏でる16ビートの芝居に観客は半ば強制的に全神経を尖らせられる中、ふと差し込まれるウィットに富んだ"笑い"によって、張り詰めさせられた緊張が一気に緩められる演出もにくい。殺人事件がテーマで、4人それぞれが真っ当ではないバックボーンを持っているにも関わらず、要所要所に散りばめられている"笑い"が登場人物の誰かに感情移入して暗い気持ちになり過ぎない効果を生み出しており、珠玉のエンターテインメントへと昇華させているのだ。そんな、時にウィットに富み、時にバカバカしく、時にユニークな色とりどりの"笑い"は、ライブのコールのように楽しさと一体感を感じさせてくれる。

平成最後を飾るにふさわしい"まったく新しい『熱海殺人事件』"で、ロックバンドのライブに行ったような興奮と一体感と心地よい疲労感を感じていただきたい。

文=原田健

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放送情報

舞台「熱海殺人事件 LAST GENERATION 46」
放送情報:2019年5月25日(土)20:30~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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