今となっては、橋本環奈を紹介するのに「1000年に一人の逸材」「天使すぎる」という肩書をつけることはほとんどないだろう。それほど彼女が近年、女優として際立った活躍をしているということの証左だと言える。特に2017年の映画『銀魂』では、鼻をほじってみせたり、振り切った変顔を披露したりと、コメディエンヌとして開花。若手女優の注目株としてその名を広く知らしめた。
橋本環奈は1999年2月3日生まれ。福岡県出身。小学生の時に芸能界入り。2011年公開の、是枝裕和監督による映画『奇跡』のオーディションに合格し、映画初出演を果たした。その後、所属していたアイドルグループRev.from DVLの一員として参加したイベントの写真が「奇跡の1枚」としてネットで紹介され、注目を集めた。そしてその「奇跡の1枚」がきっかけとなり、角川映画40周年記念作品として2016年に公開された映画『セーラー服と機関銃 卒業』の主役に抜てき。まさにネット時代の"奇跡"が生んだシンデレラストーリーだった。この作品が7月2日(木)衛星劇場にて放送される。
本作で橋本が演じるのは、かつて弱小ヤクザ・目高組の四代目組長を襲名していた女子高生の星泉。目高組が解散した後、シャッター商店街のなかで「メダカカフェ」の店長として、普通の女子高生の日々を送っていたが、そんな彼女の周辺に再び危ない影が忍び寄ってくる......という物語だ。薬師丸ひろ子主演の1981年版の続編というよりは、現代にリブートさせたパラレルワールド的な作品という趣だろうか。
1981年版で、薬師丸ひろ子演じるセーラー服の女子高生・星泉が機関銃を乱射し、「カ・イ・カ・ン!」とつぶやくシーンは、映画史に残る伝説のシーンとして語り継がれている。『セーラー服と機関銃』は、薬師丸ひろ子をはじめ、原田知世、長澤まさみら、そうそうたる女優陣が演じてきて、多くの人に強烈な印象を残してきた伝説のタイトル。
はつらつとしていて、ひたむきな感じの橋本環奈版・星泉も悪くない。声をからすほどの熱演も、星泉になりきっていたからこそであり、アイドルではなく女優として生きていくんだ、といった覚悟のようなものを感じる。クライマックスでは、主題歌「セーラー服と機関銃」をアカペラで披露。ハスキーな声が染み渡る。
映画公開時に発売されたフォトブックに掲載されたインタビューによると、前田弘二監督は「状況としては暗く沈んでいきそうなシーンの連続なんですが、それをパンとひっくり返す存在感と明るさが橋本さんにはある」と評している。また、敵対する役柄を演じた伊武雅刀、安藤政信といったくせ者俳優たちに対して、前田監督は「思いっきりやってください」とけしかけたというが、橋本は一歩もひるまずにくせ者たちと対峙。前田監督も「度胸があるな」と舌を巻き、「映画に愛されるとんでもない女優になる」と感じたという。橋本自身も「この映画のおかげで、映画の世界が大好きになりました」と語っている。
その後の彼女の、女優としての活躍は言うまでもないだろう。そんな彼女のキャリアをあらためて見てみると、この作品はアイドルから女優への一歩を踏み出した、注目の1本だったと言えそうだ。
文=壬生智裕
放送情報
セーラー服と機関銃 卒業
放送日時:2020年7月2日(木)20:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります
詳しくはこちら