幸せって何ですか?一流企業で働くこと?好きな人と結婚すること?ステキな家に住むこと?でも、はたからどんなに幸せに見えても、当事者にとっては幸せじゃないかもしれない。そんな風に幸せについて考えさせられるドラマ「G線上のあなたと私」がTBSチャンネル1にて放送される。
アラサーの小暮也映子(波瑠)は、寿退社間近に婚約破棄され、放心状態で立ち寄ったショッピングモールで偶然「G線上のアリア」の生演奏を耳にして、大人のバイオリン教室に通い始める。
教室で同じクラスになったのはイマドキの大学生・加瀬理人(中川大志)と、40代の主婦・北河幸恵(松下由樹)。理人は兄の元婚約者でバイオリン教室の先生・眞於(桜井ユキ)に片思い中。幸恵は干渉してくる姑と浮気している夫に心が晴れない日々を送っている。
普段のコミュニティでは出会うことのないバックボーンを持つ3人。接点がないからこそカッコ付けることなく弱さをさらけ出せる関係となり、バイオリンは彼女たちの「よりどころ」になっていく。
お互いを知るうちに意識しはじめる也映子と理人だが、也映子は8歳も年下の理人との関係を進めることに躊躇する。回が進むにつれて、ふたりの不器用な恋の行方が物語の中心になっていくのだが、「G線上のあなたと私」が支持されたのは、恋愛だけを描いたドラマではないからだ。
この作品では、主人公だけでなく、そのまわりの人物たちも丁寧に描かれている。年齢によって立場によって、共感できる誰かがいる。特に、主婦・幸恵に感情移入する人が多かったのではないだろうか。2人の恋愛をドキドキしながら見守る姿は、完全に視聴者とシンクロするし、主婦として完璧に仕事をこなしているのに、家族のだれからも感謝されない姿を見ると、主婦として、旦那として、娘として、息子として、心がチクッとしてしまう。そしてすべてのモヤモヤを自分だけで受け止めてきた幸恵は、ある日、家出をすることで当たり前が当たり前でなかったことを家族に気付かせることとなる。
傷つくのが怖くて、失うのが怖くて、「好きのその先に行くのが怖い」という也映子に幸恵は、「ゆるくて優しい世界にとどまってちゃダメ。本当に大事な人とは、ゆるくて優しい世界のその先に行かなきゃ」とアドバイス。理人は也映子のために「何とかするから!」と先に進む決意をするのだが、幸恵の行動が、2人の関係を変えるきっかけになったのだ。ラストのエレベーターのシーンを見終わった後には、幸恵と共に彼らの恋の行く末を見守ってきた視聴者もなんともいえない幸せな気持ちを感じられることだろう。
キレイな波瑠がメガネをかけてちょっと冴えない女子を演じ、イケメンの中川大志がこじらせ片思いくんを演じたが、なんだか自分の身近にもいそうなくらいの親近感がわいてしまう。そして何といってもMVPは、松下由樹。最終回には「幸恵さん」がSNSのトレンドに入っていたが、彼女なくして視聴者がシンクロできる幸恵は成立しなかっただろう。この3人が演じていたからこそ、この作品の魅力が増したといえるだろう。
怖がっていたら、何も変わらない。もしかしたらそのままでも、そこそこの人生なのかもしれないが、幸せは、勇気を出したその先にあるものなのだ。そんな幸せのヒントが、作中のあちらこちらにちりばめられている。この作品を見終わったあとには、「いくつでも前に進める」と、ちょっとだけポジティブな気持ちになれるはずだ。
文=坂本ゆかり
放送情報
G線上のあなたと私
放送日時:2020年9月20日(日)11:00~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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