人気絶頂の中、21歳で引退。その後は芸能界の表舞台には一切姿を見せることなく、伝説となった山口百恵。歌手として数々の大ヒット曲を連発してきた山口だが、女優としてもドラマ、映画などに多く出演。愁いを帯びた独特な存在感は多くの人に愛された。
特に女優業では、後に結婚し、夫となる俳優・三浦友和との共演作が多く、2人は"ゴールデンコンビ"と呼ばれていた。相手役が三浦友和ではなく、別の役者になった時にはファンからプロダクション、映画会社などに抗議の電話や手紙が寄せられたこともあったそうで、それほどまでに、この"ゴールデンコンビ"はファンからも愛された。
山口にとって映画初主演作となった川端康成原作の『伊豆の踊子』(1974年)に続き、主演作第2弾となる『潮騒』(1975年)も三島由紀夫原作となる文芸作品。共演はもちろん三浦友和。この映画が11月2日(月) 衛星劇場にて放送される。
『潮騒』は三重県、伊勢湾に浮かぶ小島・歌島(現在の神島)の美しい大自然を舞台に、若き漁師と、美しい海女の少女が、幾多の困難を乗り越え、純愛を貫くさまを描き出すラブストーリー。現在まで5度にわたって映画化されてきたが、原作者・三島由紀夫は神島ロケを行うことを映画化の条件としていたということもあり、すべての映画化作品で神島ロケを実施。本作も数日間、神島で撮影された。
山口が演じるのは網元の娘・初江。素朴で可憐だが、それでいて芯の強いところもある少女だ。山口自身、「気の強いところなんかは私に似ている」と感じたといい、「潮の香りがするような、初江のおおらかさを出すのと、鳥羽の方言に苦労しました」と振り返っている。メガホンをとるのは、日活出身で、数々の吉永小百合の主演映画を手がけてきた西河克己。『伊豆の踊子』をはじめ、『絶唱』『エデンの海』など、山口の主演作を数々手がけている名匠だ。
『潮騒』といえば、嵐の中に廃屋で会うことになった2人が、たき火の前で裸になり、愛を確かめ合うというシーンが有名。NHK朝ドラ「あまちゃん」をはじめ、数々のパロディー、オマージュをささげられてきた。本作も、アイドル映画としてはかなりギリギリの露出が話題となったが、当の本人は「うまくカメラでごまかしてもらったので、別にどうってことはなかったわ」とこともなげに語っていたという。
原作では初江のことを「健康な肌いろはほかの女たちと変わらないが、目もとが涼しく、眉は静かである」と記しているが、山口百恵は初江のイメージに近いという声も多い。その初々しい魅力は一見の価値がある。
文=壬生智裕
放送情報
潮騒
放送日時:2020年11月2日(月)10:15~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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