主演映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』が2021年に公開されることが決定し、TBS系ドラマ「恋はつづくよどこまでも」でのドSなドクターっぷりが女子をドキドキさせたことも記憶に新しい佐藤健。俳優として引っぱりだこの佐藤が、無精髭を生やし、一家の次男を演じた映画『ひとよ』(2019年公開)がWOWOWシネマにて11月に放送される。
家族の崩壊と再生を描いた今作は桑原裕子の同名舞台劇が原作で監督は『凪待ち』、『孤狼の血』など多くの話題作で知られる白石和彌。田中裕子演じる母親、こはるが子どもたちを守るためにとった大胆な行動で始まる映画で佐藤が演じた役どころとは?そして"家族"について考えさせられずにはいられないヒューマンドラマの魅力とは?
■佐藤健史上、一番やさぐれている役!?
佐藤が演じているのは地方都市でタクシー会社を営む稲村家の次男、雄二。夫の家庭内暴力から子どもたちを守るため、こはる(田中裕子)は土砂降りの夜に家に帰ってきて夫を殺してきたことを長男の大樹(鈴木亮平)、長女で末っ子の園子(松岡茉優)、雄二に告げる。「これからは好きなように生きていける。自由に生きていける。何にだってなれる」という言葉を残して警察に出頭。15年後に必ず戻ってくると約束する。
母親の一夜の罪と、父親殺害が自分たちのためだったという事実に苦しみ、世間の冷たい風にさらされ、翻弄される兄弟の人生。次男の雄二は東京でフリーライターとして働くことになる。やさぐれた雰囲気、家族に対する冷めた態度、内側に隠している母への愛憎。佐藤の演技は物語が終盤に向かうにつれて迫力を増してくる。
■圧倒的な母の存在感と家族であることの重み
映画の柱となっているのは田中裕子演じる母親、こはるの存在だ。約束通り、15年後に家に帰ってきて、東京から帰ってきた雄二をあやうくタクシーで轢きそうになり、またやっちゃうところだったと冗談を飛ばすなど、その肝の座り具合がハンパではない。が、子どもたちを心配し、変わらない愛情を注ぐ姿は事件前と何も変わらない"母"そのもの。見ている内に母も子どもたちも誰も悪くないと思わせられるのは田中の怪演あってこそだ。
妻(MEGUMI)と子どもを持ったものの、事件のことを隠していた大樹、美容師の夢をあきらめ、スナックで働き、母の帰りをひたすら待っていたムードメーカーの園子、そして雄二。タクシー会社に転職した訳ありの過去を持つ堂下(佐々木蔵之介)の父親としての顔も物語に絡んでいき、後半に向かうにつれ、それぞれの問題が勃発、登場人物の抑えていた感情が爆発していく展開にも引き寄せられる。
テーマは重いが、時折クスッと笑えるユーモアもあり、何が正しいのか簡単に割り切れるものではない人間の生き様、そして家族について考えさせられるまさにヒューマンドラマ。余韻が残る。
文=山本弘子
放送情報
ひとよ
放送日時:2020年11月21日(土)22:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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