強烈な存在感に目を奪われる!女優・二階堂ふみの原点とも言うべき映画

『ヒミズ』より
『ヒミズ』より

現在放送中のドラマ「プロミス・シンデレラ」では人生崖っぷちのアラサー女子・桂木早梅に扮しラブコメ演技を見せ、昨年は作曲家・古関裕而と妻・金子をモデルにしたNHK連続テレビ小説「エール」で、ヒロイン・関内音として抜群の歌唱力と演技力を見せた女優・二階堂ふみ。幅広い演技と、どんな配役でも存在感を発揮する天性の才能をもつ二階堂が、女優として頭角を現した作品とは?

映画デビューとなった役所広司監督の映画『ガマの油』(2009年)で、喜怒哀楽の表現を見せた二階堂。その後も映画初主演作『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(2011年)で迫力ある演技を披露し、周囲を圧倒した。当初から「ただ者ではないな」というオーラを放っていた二階堂を全国的に、いや世界的に名の知れた存在に押し上げたのは、2012年公開の園子温監督の映画『ヒミズ』(9月にムービープラスで放送)だろう。

『ヒミズ』に出演した二階堂ふみ

(C)「ヒミズ」フィルムパートナーズ

「行け!稲中卓球部」の漫画家・古谷実の原作で、舞台を東日本大震災後に変更して実写化した本作。家庭環境に恵まれず育ち、だからこそ普通の大人になることを夢見る中学生・住田祐一(染谷将太)。クラスメートの茶沢景子(二階堂)はそんな住田に想いを寄せ、しつこいくらいに付きまとっていた。ある日、蒸発していた住田の父親が突然帰宅するが、その横暴さに我慢ならなくなった住田は、衝動的にある"事件"を起こしてしまう。

(C)「ヒミズ」フィルムパートナーズ

(C)「ヒミズ」フィルムパートナーズ

『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』などを代表作に持つ園子温監督と言えば、過激な表現と強烈すぎるキャラクターが持ち味。そのクセの強い空気感に順応し、存在感を示しているのが、住田に疎まれながらも猛アタックを繰り返す茶沢景子を演じた二階堂だ。住田に憧れるあまり、彼の発言はすべて記録し、自宅の部屋に貼り出すという狂気を見せる景子。住田の自宅である貸しボート屋に押しかけ、「帰れよ」と言われても怯まず、住田と本気の殴り合いをしてまでも住田へ執着する様子は、彼女の自己肯定感の無さを見事に描いている。

そして"普通"を求めていた住田がどんどんその夢から離れていく物語後半。そんな住田をなんとか繋ぎ止める役割をしていたのが、「君が死んだらこの先悲しくてやってられません」と説得する景子だった。初めはうっとおしかった景子が、気が付けば住田にとって最後の希望のように思える。そう感じさせるのは、二階堂自身の本気や覚悟、揺るぐことの無い芯の強さが役を通じて発露しているからではないかと思う。

(C)「ヒミズ」フィルムパートナーズ

(C)「ヒミズ」フィルムパートナーズ

この作品で二階堂はベネチア国際映画祭における新人賞・マルチェロ・マストロヤンニ賞を染谷将太とW受賞し、世界にまで名を轟かせている。また本作の撮影を経て「自分がすごく強くなったと思います」、女優業について「覚悟が決まった」と二階堂は過去のインタビューで語っている。

『地獄でなぜ悪い』より

(C)2012「地獄でなぜ悪い」製作委員会

その後二階堂が数々の作品で名演技を見せてきたのは周知の通りであると思うし、2013年には園監督と再びタッグを組んだ『地獄でなぜ悪い』で一皮むけた姿を披露している。彼女にとって一つのターニングポイントであったであろう『ヒミズ』。二階堂の原点とも言うべき本作は彼女を知る上で必見だ。

文=津金美雪

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放送情報

地獄でなぜ悪い
放送日時:2021年9月6日(月)21:00~ほか
ヒミズ
放送日時:2021年9月6日(月)23:30~ほか
チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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