「仮面ライダー電王」は2007年から2008年に放送された平成仮面ライダーシリーズの第8作にあたる。同作の主人公・野上良太郎(仮面ライダー電王)を演じたのが、佐藤健。佐藤はこの作品が連続ドラマ初主演だった。当時は演技経験が少ないながらも、主人公を体当たりで好演。「ほぼゼロから全てを教えて頂いた僕の原点」だと後に証言している。
ストーリーは、歴史を改変するために未来からやってきた侵略者イマジンと、これを阻止するために戦う仮面ライダー電王、そして良太郎に憑依して力を貸すモモタロスたちの活躍を描いている。「電車」をモチーフにした点が画期的で、タイムトラベルを中心とした緻密なストーリー、良太郎に憑依するイマジンによって電王の変身フォームが変化する設定などが斬新で、仮面ライダーファンの間でも評価が高い。
劇中でイマジンに憑依されて人格が入れ替わるという場面があったため、高度な演技を要求されることとなり、新人に近い当時の佐藤にとって難役であったことは想像に難くない。それでも、豊かな表現力と心情を素直に演じた佐藤の演技は視聴者の胸を打った。本作の人気はシリーズ中でも屈指のもので、テレビシリーズ終了後も人気は収まらず、複数の劇場版も制作された。
そのうちの1作が、9月に東映チャンネルで放送される『劇場版 仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事(デカ)』(2008年公開)である。電王だけではなく、「仮面ライダーキバ」のキャラクターも登場。いわゆるクロスオーバー作品で、ダブルライダーの共演が話題となった。本作では、本編とは少し趣向を変えて、「デンライナー署」の刑事という設定で佐藤演じる良太郎たちが活躍する。この作品では、次回作となる「仮面ライダーキバ」の主人公を演じる瀬戸康史と共演している点でも興味深い。ちなみに瀬戸も同作が出世作となり、後にNHK大河ドラマで時代劇に挑戦したことなど、佐藤との共通点も多い気がする。
さて、「電王」の後の佐藤の活躍ぶりは説明するまでもないだろう。2009年には「メイちゃんの執事」で第60回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞を受賞。2010年にはNHK大河ドラマ「龍馬伝」の岡田以蔵役で時代劇に挑戦し、評判となった。「龍馬伝」でチーフ演出を担当した大友啓史監督がメガホンをとった2012年公開の映画『るろうに剣心』で演じた主人公・緋村剣心も佐藤の当たり役となり、これまでシリーズ5作が製作されている。2020年のドラマ「恋はつづくよどこまでも」での好演も記憶に新しい。
2018年公開の映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』では、10年振りに野上良太郎を演じ、ライダーファンを喜ばせた。
この機会に「仮面ライダー電王」の魅力を再発見してみてはいかがだろう。
文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)
放送情報
劇場版 仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事(デカ)
放送日時:2021年9月5日(日)10:30~
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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