もし自分が突然死んでしまったら、誰にも見られたくないデータはどうなるのか。これはスマートフォンやPCなどのデジタルデバイスが普及した現代では、避けて通れない懸念事項かもしれない。そんなデジタル遺品を題材にしたドラマが、2018年に金曜ナイトドラマ枠で放送された「dele(ディーリー)」だ。
10月29日(金)にテレ朝チャンネル1で放送される本作は、ベストセラー作家の本多孝好が完全オリジナルドラマの原案・脚本に初挑戦した作品。本多のほかに、直木賞作家の金城一紀ら計6名の脚本家たちが1話完結型形式の多彩な人間ドラマを描いている。山田孝之と菅田将暉の2人がW主演を務め、メインキャストの麻生久美子が紅一点で華を添える。
各話のゲストも、江口のりこ、余貴美子、柴咲コウ、大塚明夫、麿赤兒といった豪華俳優陣によるデジタル遺品にまつわるストーリーからは依頼主の人生がリアルに感じられる。1話ごとに違ったテイストで飽きさせない演出も相まって、ドラマの世界にどっぷり引き込まれてしまう。
タイムリーかつこれまでにない斬新なテーマに、1話完結という独自のストーリーテリング、さらに豪華スタッフ・キャストが集結。となれば、近年稀に見るハイレベルなエンターテイメント作品になったのは当たり前とも言えるだろう。テレビ朝日連続ドラマ史上初の快挙となる2018年度の「ギャラクシー賞」テレビ部門優秀賞を受賞するなど、高い評価を受けた。
W主演を務めた山田と菅田は特筆に値する演技を見せている。山田が演じるのはクライアントの依頼で死後に不都合なデジタル遺品を内密に抹消する会社「dele. LIFE」を立ち上げたフリープログラマーの坂上圭司。「悪人ではないが他人から見たらムカつく人」と山田自身が言葉にしている通り、頑固でプライドの高い男だ。
車椅子を巧みに動かし淡々と説明する姿に独特の偏屈さを感じさせながらも、どこか憎めない一面も見せる。低めの声色に早口な話し方、眉間の皺や指先の動きなど細かな部分まで、"らしさ"が見てとれる演技力はさすがの一言だ。
菅田は素直で無邪気な性格の人懐っこさと、どこかふわふわとした掴みどころのなさを持つ不思議な青年・真柴祐太郎を演じている。真柴は車椅子生活を送る坂上に変わって足を使ったサポートを任され、外に出て依頼主の人生に触れていく。相手の懐にするりと入り込んで、素朴な疑問や感情を素直に言葉に。そして、周りの人を少しだけ優しい気持ちにさせる笑顔を見せ、飄々と口から出まかせをつきながらも人のために熱くなる。
そのキャラクターには一目で親近感を抱き、いつのまにか魅了されてしまう。衣装や髪型など細かなビジュアルもこだわったと言う菅田が、不思議な魅力を持つ青年を生き生きと体現。また、シリアスなシーンでの真剣な眼差しや暗い過去が垣間見える影のある表情、激しい怒りを吐露する姿などでも幅の広い表現を見せた。
菅田との共演というオファーに惹かれたと言う山田、その山田から多くの刺激を受けたと言う菅田。演技派の2人による入魂の作品となった「dele(ディーリー)」は、視聴者にとって消えることのない記憶に残る作品になるに違いない。
文=中川菜都美
放送情報
dele(ディーリー)
放送日時:2021年10月29日(金)20:00~
チャンネル:テレ朝チャンネル1
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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