長澤まさみが迫真の演技でシングルマザー役に挑戦...実在する事件をもとにしたヒューマンドラマ

長澤まさみの主演映画『MOTHER マザー』。メガホンをとったのは『日日是好日』の大森立嗣監督で、実際に起こった事件に着想を得て制作されたヒューマンドラマだ。この映画で社会の底辺を生きるシングルマザーを演じた長澤まさみは、第44回日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞。これまで演じたことがない役柄に挑戦し、授賞式で「共感しようと思っても最後まで共感できなかったですね。分からないこともあるんだなということを知った作品、役だったように感じます」とコメントした役どころと、衝撃的な内容とは?

■育児放棄、働く気ゼロの母親を迫真の演技で見せる

長澤が演じる秋子は息子をほったらかして男たちと遊び歩くシングルマザー。離婚した夫からの養育費もすぐ散財してしまい、お金がなくなると親から借金をする始末。小学生の息子・周平(郡司翔)はそんな母親に振り回される生活を送っている。

『MOTHER マザー』に出演する長澤まさみ
『MOTHER マザー』に出演する長澤まさみ

(C)2020「MOTHER」製作委員会

そのうち、秋子はホストの遼(阿部サダヲ)とゲームセンターで出会い、3人で暮らし始めるようになるが、遼もお金と女にルーズな似た者同士。やがてある事件がきっかけとなり、3人は住んでいた町を追われ、ラブホテルで生活することになる。どんな境遇に置かれてもたった1人の母親の要求に応えようとする息子と、「自分が舐めるように育ててきた子」と言いながらパチンコ三昧、借金生活でまともに働こうとしない母親。児童相談所に「私の子どもなんだから、どう育てようと勝手だろ」とタンカを切り、欲望のままに生きる自分勝手な女でありながら、秋子は周平を決して手離さない。たとえ滅茶苦茶であっても破綻していても歪んでいても、それは秋子にとっては"母親の愛情"なのだ。その複雑な心理を表現した長澤まさみの演技は生々しく、迫力たっぷり。大女優の風格が感じられる。

■長澤まさみの息子役などキャスト陣にも称賛の声が

成長して17歳になった息子・周平を演じているのは、新人俳優の奥平大兼。初めて受けたオーディションで周平役に抜擢されたというが、憂いのある表情や空虚な視線、その存在感が視聴者を「この子は何者?」と惹きつけた。秋子との荒んだ暮らしの中、最終的には実の祖父母を殺害するに至ってしまう心理はどうしようもなく切なく、簡単には断ち切れない親子の絆に心をかき乱されずにはいられない。

(C)2020「MOTHER」製作委員会

そして長澤まさみ同様、これまで演じたことのない役柄を演じた阿部サダヲのクズ男っぷりも見どころ。秋子も遼も視聴者から思いきりダメ出しをされる"大炎上キャラクター"なのだが、「こういう人、いるかも」と思わせられるリアルな部分もある。真っ白なスタンスで作品に臨んだ周平役の奥平と長澤の熱演、阿部のリアリティのある演技のバランスも良い。「コンフィデンスマンJP 」とは全く違い、長澤まさみが狂気の顔を見せ、新たな引き出しを開けた作品だ。

文=山本弘子

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放送情報

MOTHER マザー
放送日時:2021年11月3日(水)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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