せつなくもエモーショナルな空気感があふれる!成田凌主演映画『くれなずめ』の魅力

人のいい好青年からダメ男、ワイルドな役や狂気をはらんだ役など、出演するドラマや映画ごとに違った顔を見せている俳優・成田凌。来年2月に公開予定となる池松壮亮、伊藤沙莉主演の映画『ちょっと思い出しただけ』では、主人公たちの行きつけのバーの常連客で、國村隼演じるマスターが恋をする若者・フミオ役として出演。ユーモラスかつちょっぴりビターテイストな映画の世界観にしっかりと溶け込んでいる。

『ちょっと思い出しただけ』のメガホンをとったのは、ドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズの松居大悟監督。フミオが出演するシーンを観るに、相性の良さを感じさせる成田と松居監督だが、そんな2人が初タッグを組んだ2021年公開の映画『くれなずめ』だ。『くれなずめ』での成田はどこかひょうひょうとしていて、何を考えているのか分からないような青年・吉尾を好演している。

本作のベースとなったのは、松居監督が主宰する劇団「コジケン」で2017年に上演された同名の舞台。アラサーを迎えた高校時代の帰宅部仲間たち6人が、友人の結婚式で余興のために再会するが、本番では見事にだだスベり。それから2次会までの3時間、微妙な空気のまま、時間をつぶすはめになる。何もやることもなく、あてもなくフラフラとしていた彼らは、やがて誰からともなく、学生時代に思いをはせることに。過去と現在がごちゃまぜになり、やがて彼らが目を背けていた"とある事実"がそれぞれの人生に立ちはだかる――。

成田凌のほか、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹らが出演
成田凌のほか、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹らが出演

(C)2020「くれなずめ」製作委員会

なぜかしょうもないことでヘラヘラと笑い転げていた高校時代。思い出すことは決してドラマチックなことではなく、むしろくだらないことばかり。『くれなずめ』というタイトルは、日が暮れそうでなかなか暮れないでいる「暮れなずむ」を変化させた造語。前へ進もうとしても、なかなかうまく進めないでいるという、なんとも言えないいとおしい瞬間を意味するという。

成田とともに、6人の仲間を演じるのは高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹という注目の俳優たち。本作は、長年の友だちのような空気感を出すことが作品作りのキモとなるため、3週間という撮影時間のうち、全体の3分の1となる1週間をリハーサルに当てた。とはいえ本読みをしっかりと行うというよりは、多くの時間が雑談に費やされたという。そのかいあって、6人がかもし出す空気感は、"あの時"だからこそ感じられるような信頼感ときらめきがある。そうした彼らの"心のよりどころ"ともいうべき高校時代の思い出の数々がしっかりと描かれていくからこそ、話が大きく飛躍していく大人部分のエピソードがどこかせつなくも、エモーショナルに心に響く。

成田が演じた吉尾という役柄は、松居監督の大学時代の友人がモデルとなっているという。そういう意味ではある種、パーソナルな部分からスタートした物語ではあるが、観ていくうちに昔の友だちを思い出してヘラヘラと笑ってしまうような、「あいつ、どうしているかな」と思わせてしまうような、そんな普遍性を帯びた作品となっている。

文=壬生智裕

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放送情報

くれなずめ
放送日時:2021年12月2日(木)18:15~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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