2012年公開の第1作『るろうに剣心』から足掛け約9年、佐藤健の代表作となった"るろ剣"シリーズが2021年、完結した。完結編『るろうに剣心 最終章』は前編『―The Final』と後編『―The Beginning』の2部作構成で、7月には2作合計で興行収入65億円を突破する大ヒットを記録。その中で、緋村剣心(佐藤)の頬の十字傷の由来に焦点を当てた『るろうに剣心 最終章 The Final』が、WOWOWで放送される。
2010年の大河ドラマ「龍馬伝」で、佐藤は幕末期に"人斬り以蔵"と恐れられた岡田以蔵を演じた。この作品のチーフ演出だった大友啓史がNHKを退局後にメガホンをとった長編作品が、2012年の第1作『るろうに剣心』。人斬り以蔵でのカミソリのような凄みが印象的だった佐藤が、その主演に抜てきされた。
幕末の動乱期、京都で"人斬り抜刀斎"と恐れられた凄腕の暗殺者・緋村剣心の姿を描く『るろうに剣心』はその後、全5作品が制作される人気シリーズに。佐藤の俳優人生を語る上でなくてはならない作品へと成長した。
中でも毎回ファンを熱狂させるのが、圧倒的なアクション描写。第1作当時から、20代前半だった佐藤の超高速で美しい殺陣シーンや派手なワイヤーアクションなど目を引く要素は多かったが、30代になって挑んだ『るろうに剣心 最終章 The Final』ではそのアクションにさらに磨きがかかり、壮絶なまでの映像へと目を見張る進化を遂げたように感じる。
入念なアクショントレーニングを重ねて撮影を迎えたという佐藤。屋根瓦を全力疾走するシーンや、敵をかわしながら建物を駆け上がるシーンのド派手なワイヤーアクションも、スピード感、迫力ともに増し、剣心の人間離れした存在感に説得力を与えている。
さらに、シリーズ史上最凶の敵・雪代縁(新田真剣佑)や、『―京都大火編』『―伝説の最期編』でも剣心と壮絶な戦いを演じた瀬田宗次郎(神木隆之介)との、緊張感みなぎる対峙シーン。互いの身体能力の限界に挑むかのようなアクションは、圧巻の一言だ。
そして"最終章"と銘打たれた今回は、剣心の頬に刻まれた十字の傷の背景が明かされる。胸に秘めてきた悲しみと自責の念に向き合う剣心の表情は、約10年にわたって剣心を演じてきた佐藤にしか表現できない深みをたたえ、見る者の心を強く揺さぶる。
ここ数年、『何者』、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』、『億男』など多数の作品に主演しているが、激しいガンアクションの『亜人』や、大量殺人鬼と化す高校生を演じた『いぬやしき』など、アクション作品での活躍ぶりも目覚ましい。もともと高い身体能力を備えた佐藤だが、緋村剣心を演じる中で得た経験も、アクション俳優としての活躍に繋がっているのだろう。
一方で連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK総合ほか)やドラマ「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)など恋愛主軸のストーリーではファンを魅了し、硬軟それぞれに魅力を発揮する。『るろうに剣心 最終章 The Final』で見せる魂の集大成に、改めて注目したい。
文=酒寄美智子
放送情報
るろうに剣心 最終章 The Final
放送日時:2022年1月22日(土)13:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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