現実に起きた大奥史上最大のスキャンダルと呼ばれる"絵島生島事件"をモチーフにした映画『大奥』に林徹監督の8分のこだわり映像を加えた『大奥 スペシャル・エディション版』が時代劇専門チャンネルで放送される。大ヒットしたドラマの集大成である映画の主演を務めたのは仲間由紀恵。憎悪と嫉妬が渦巻く大奥で大奥総取締を務めるヒロインを演じ、恋に落ちる歌舞伎役者を西島秀俊が演じている。江戸城の女たちの豪華絢爛なシーンや日本情緒に溢れた映像美もさることながら、際立っているのは仲間の凛とした美しさ。幕府の勢力争いに巻き込まれ、理性と感情に揺れる演技に引き込まれる。
■誘惑をはねのける簡単に落ちない女性は仲間由紀恵にピッタリ
絵島(仲間)は7代将軍、徳川家継の生母である月光院(井川遥)から絶大な信頼を寄せられ、女中たちからも慕われている大奥総取締。月光院と対立しているのが天英院(高島礼子)派に属する女性たちだ。我が物顔で政を操っている側用人・間部詮房(及川光博)と月光院が密通しているという噂を耳にし、2人を失脚させるために作戦を練り、標的にされるのが絵島。当時の大奥の女性たちの数少ない娯楽であった歌舞伎を見に行かせ、人気役者、生島新五郎(西島秀俊)にお金を渡し、絵島を落とすように命じたのだ。偶然、縁結びのお寺で出会い、生島のことが気になっていた絵島は思わぬ再会に動揺するものの「私を買いたいですか?」と尋ねる生島をピシャリとはねのける。その後も行く先々に不思議と現れる生島に心を奪われていくが、大奥を取り仕切る責任感と使命を背負っている真面目な彼女は簡単には揺らがない。恋する視線で生島を見つめながらも「そなたとは住む世界が違います」とキリッとした表情に切り替わる仲間の凛々しさが印象的だ。
■日本の夏が演出する2人のドラマティックで切ない恋
度重なる出来事に絵島はやがて生島とのことが仕組まれた罠だと気づくが、ある事件によって、自分の気持ちを抑えられなくなっていく。男性を知らない絵島の初々しさに生島も惹かれていき、やがて2人は本気の恋をする。江戸の町の人たちがお面をかぶって楽しむ祭の喧騒の中を手を繋いで走るシーンは幻想的で、部屋から見える花火に「きれい」と涙する表情は大奥総取締ではなく、好きな人と一緒にいられる幸せを噛み締めているひとりの女性そのものだ。女性の扱いには慣れている歌舞伎役者を演じる西島も新鮮。
ドラマに続き、浅野ゆう子、松下由樹らも出演し、「大奥」の女性同士のドロドロも描かれているが、禁断の切なすぎるラブストーリーにフォーカスしたのが本作。家継(澁谷武尊) の5才にして男前なポジションにもグッとくる。
文=山本弘子
放送情報
大奥 スペシャル・エディション版
放送日時:2022年2月13日(日)23:30~ほか
チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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