全世界での総発行部数が800万部を超える夢枕獏の人気小説「陰陽師」。シリーズ初の長編が、舞台『陰陽師 生成り姫』として、東京・新橋演舞場、京都・南座で上演されることが決定した。今回、平安時代の大納言の妻・綾子姫を演じるのは、アイドルグループ・NMB48の3期生メンバーとして活躍し、卒業後は女優として幅広く活動している太田夢莉だ。今回、公演に先駆けて彼女にインタビューを行い、作品にかける思いなどを聞いた。
――台本を最初に読んだ際、どのような感想を抱きましたか?
「『ちゃんと役がある!』と感動しました (笑)。少しだけ登場するのかなと思っていたので驚きましたし嬉しかったです。本作は、しっかりとした人間ドラマがあって、シリアスなシーンも多いのですが、私が演じる綾子姫が登場するのはギャグっぽいというか、笑える場面なので、おいしい役をいただいたなと(笑)、本当にありがたいと思いました」
――今回演じられるのは平安時代のお姫様ですが、どのような心境ですか?
「今はまだ姫としての要素も演じる実感も全く無いのですが、『姫を演じよう』というよりも、ただただ『等身大のわがままな女の子』を上手く表現できたらなと思っています」
――平安時代の装束を着た感想は?
「和服ってすごく神聖で素敵なんですが、いろいろ大変な部分も多いんだなと思いました。着ていてもそうなんですが、髪のお直しも、毛束が一束あるだけで全然印象が違いますし、お衣裳もミリ単位のズレを直しながらポスタービジュアルを撮影したので、大変さを実感しました。平安装束は姿勢も良くないとダメなので、日頃から気をつけるようになりました」
――「陰陽師」という物語に抱いていた印象と、演じるなかで感じた平安時代の魅力について聞かせてください。
「夢枕獏さんの原作小説は、台本をいただいた後に拝読しました。『陰陽師』という職業については、今回の舞台出演をきっかけに初めて知ったんですが、安倍晴明の出身地が奈良県という説があると聞きまして。私も奈良出身なので、親近感を抱きました。平安時代については、生活や文化の面では理解できないことが多いかなと思っていましたが、恋愛や人間模様といった面では、意外と現代と変わらないんだなと感じました。でも、当時の貴族はお互いの顔を見ずに、和歌を送り合う中で恋をして結婚相手を決めると知った時は、本当に驚きましたね」
――太田さんは平安時代で生きていけそうですか?
「シャンプーが毎日できないので『無理だ!』と思いました(笑)。平安時代は髪の毛の長さで美しさを競うということですが、私は『短い方が絶対楽!』と思ってしまうので、ちょっと厳しいですね。でも、和歌や文を送り合う文化は、とても素敵だなと思いました。私はSNSが得意ではないので、手紙を1週間に1回送るか送らないかくらいの、ほどよい距離感の方が気持ちも高まるだろうし、そういうのってロマンチックでいいなとすごく思います!だって、ずっとキュンキュンしていられますよね。いいですよね...(笑)。現代はいろいろなことが栄え過ぎているんだなと、平安時代のことを知って思いました」
――最後に、舞台『陰陽師 生成り姫』を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
太田「平安時代を題材にした作品って、どこか固い印象を持ってしまう方もいらっしゃると思います。でも今回の舞台は、重厚な場面にもちょこちょこ隠れた遊び心があって、演出面でも『ここに気づいて欲しい!』というポイントがいくつもあります。何度ご覧になっていただいても新たな発見がある作品だと思います。ぜひご観劇いただけると嬉しいです!」
取材・文=中村実香 撮影=皆藤健治