2001年にグループ結成し2006年のデビューから15周年を迎え、昨年末には紅白歌合戦初出演も果たしたKAT-TUN。彼らのアイドルグループとしての活躍は周知の通りだが、紆余曲折を乗り越えて3人で迎えたアニバーサリーはメンバーはもちろんのことファンも感慨深いものがあったに違いない。三者三様の個性を発揮して彼らは直向きに前に進み続けている。その中でも、今春からWOWOWで放送・配信開始する連続ドラマW「正体」にて、WOWOW連続ドラマ初主演を果たす亀梨和也の俳優としての活動に改めて注目したい。
1999年に「3年B組金八先生 第5シリーズ」で連続ドラマ初出演した亀梨。2005年には当時、若手俳優の登竜門的ドラマともされる「ごくせん」第2シリーズでメインキャストの1人に抜擢された。同年の「野ブタ。をプロデュース」では、学校という小さな世界で必死に生きている高校生の葛藤や孤独を瑞々しい感性で表現し、山下智久とのユニットも話題を集めた。その後も、「妖怪人間ベム」(2011年)で演じた人間になることを夢見る妖怪人間や、『PとJK』(2017年)など少女漫画の実写化作品で王道ヒーローも務め、俳優としての経験を着実に積み重ねてきた。近年では、恋愛や青春をテーマとする若さ溢れる作品だけではなく、本格刑事ものやクライムサスペンスなどジャンルでも主演を務め、演技の幅を広げている。
昨年話題を集めた興行収入23億円超えの大ヒット映画『事故物件 恐い間取り』もその1つ。ホラー映画初出演となった亀梨は、原作者である芸人・松原タニシさながらの微妙に冴えない雰囲気や売れていく中での痛々しさまで体現していた。
そして、同作の監督を務めた中田秀夫と再びタッグを組んだのが、染井為人の傑作サスペンスを原作とする「正体」だ。本作で亀梨が演じるのは、ある夫婦の殺人事件の容疑者として死刑宣告された男・鏑木慶一。移送中に脱獄した鏑木は、逃走しながらも潜伏先で出会う人々を窮地から救っていく。亀梨の他に、黒木瞳、市原隼人、貫地谷しほり、上川隆也ら実力派俳優陣が脇を固める。人を救う理由や正体は分からないままにストーリーは展開していく。救われた人々が彼の正体を知った時、どう行動するのか。葛藤や苦悩、それぞれの人間模様が描かれる重厚なサスペンスエンターテインメント作となっている。
正体を隠して逃亡を続けるという役柄は、アイドルとして輝きを放ちながらもどこか哀愁を感じさせる独特の雰囲気が存分に活かされている。主人公・鏑木は、各地を転々とする中で外見や名前だけでなく性格までも変化させる。心の機微を繊細に表現してきた目の演技にも注目したい。自身もアイデアを出したというポスタービジュアルからも、これまでとはまた違う意気込みを感じさせる。
キラキラしたアイドル然とした姿だけでなくグミのCMなどでコミカルな姿も披露し、スポーツキャスターとしても高く評価されている亀梨。少年時代から親しむ野球で培った精神力や努力家な面も持ち合わせている。野球、音楽、演技、人に対して真摯に向き合ってきた。そういう誠実な人柄が現れているからこそ、俳優としても重用されるのかもしれない。美麗な青年から、一本筋の通った大人の男性へ。様々な経験を乗り越えて年齢を重ねた亀梨が、いま全力の熱量で魅せる演技に期待が高まる。
文=中川菜都美
放送情報
連続ドラマW 正体
放送日時:2022年3月12日(土) 22:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります
詳しくはこちら