快活でケンカっ早い高倉健のもう一つの魅力爆発『新網走番外地』

2014年に亡くなった国民的映画スター・高倉健。「健さん」の愛称で親しまれる彼といえば寡黙で忍耐強い、不器用で渋い、男の中の男、というイメージが強いかもしれない。実際にそのような側面が強調された作品も多かったし、実際に本人にもそういう面があったという。だが、彼の数多い代表作の中の一つ、『網走番外地』シリーズの健さんはちょっと違う。

『網走番外地』シリーズは明朗快活なアクション映画

『網走番外地』シリーズは1965年にスタートした高倉健の大ヒットシリーズ。罪を犯して網走の刑務所に送られた主人公・橘真一(高倉健)の活躍を描く。極寒の地・網走を舞台にしていることと、健さんの渋みをたっぷり効かせた主題歌のせいか、重厚な作品だと思っている人もいるかもしれないが、それは大きな間違い。『網走番外地』シリーズは健さんの魅力がたっぷり詰まった快活なアクション映画なのだ。

石井輝男監督による『網走番外地』シリーズはヒットを重ね、わずか3年の間に10本が製作される。その後、1968年からは健さんのもう一つの代表作である『日本侠客伝』シリーズを監督した名匠・マキノ雅弘、後に健さんと数多くの作品をつくる降旗康男が手がけた『新網走番外地』シリーズが8本製作された。

義理と人情を重んじる折り目正しいヤクザを演じた『日本侠客伝』シリーズや『昭和残侠伝』シリーズと違い、同じヤクザでも『網走番外地』シリーズの健さんは気が短く、ちょっとしたことでカッとなる。陽気でおしゃべりでケンカっ早く、ちょっとコミカルな部分もある。高倉健マニアを自認するスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーによると「寅さんにも通じるような愛嬌がある」。演出家の鴨下信一は「健さん初心者には『網走番外地』シリーズから観て欲しい」と語っている。

とにかくケンカっ早い『新網走番外地』の健さん

新シリーズ第1作『新網走番外地』で健さんが演じる末広勝治は、とにかくケンカっ早い。復員兵として東京に帰ってきたと思ったら、すぐさま乱暴狼藉を働くMP(進駐軍の軍事警察)を叩きのめし、網走にある進駐軍の刑務所に送られる。クリスマスで浮かれるアメリカ人たちに「何言ってやがんだ、こっちは南無妙法蓮華経だ!」と吐き捨てるあたり、たしかに寅さんっぽい。

物語は健さんが再び東京に帰ってきてから本格的に始まるのだが、とにかく本作の健さんは相手がアメリカ人だろうが、中国人だろうが、日本人だろうが、気に入らないことがあればすぐに殴りかかる。大げさではなく、5分に1回ぐらいのペースで誰かとケンカをしているのだ。最後は長ドスと手榴弾を手に、テキ屋を食い物にするヤクザ相手に大立ち回りを演じてみせる。

若くて陽気な弟分に長門裕之、東宝でモダンなヒーローを演じていた三橋達也が健さんのライバル役で出演するなど、共演陣もグッと賑やか。ストーリーとまったく関係のない、水着姿の金髪美女のセクシーダンスシーンまであるサービスぶりだ。

実はイタズラ好きだった素顔の健さん

そもそも若い頃の健さんは快活でイタズラ好きな男として知られていた。『網走番外地』シリーズで共演していた丹波哲郎に催眠術を習った健さんは、さっそく撮影中に宿の女中さんに催眠術をかけて、どんどん服を脱がせてしまったりしていたというエピソードもあるのだから驚きだ。

「本番という言葉を聞いたら『網走番外地』を歌いだしたくなる」という催眠術をスタッフにかけたときは、撮影で「本番!」とかけ声がかかるとセットの奥から「網走番外地」の歌声が聞こえてきて現場は大騒ぎになったらしい。さすがの丹波哲郎も「俺は高倉健に催眠術を教えたことだけは後悔している」とボヤくことしきりだったという。

催眠術のほかにも、若い端役に馬用の下剤を飲ませたり、寝ている間に前歯にマジックを塗ったり、脱毛クリームで眉毛を落としてしまったり、胡椒入りの温泉に入れたりと、もうメチャクチャ。そんなエピソードが生まれたのがだいたい『網走番外地』シリーズの撮影中の出来事だったというのだから、作品のテイストも想像できるのではないだろうか。

国民的スター・高倉健のもう一つの面を『新網走番外地』シリーズでぜひ知ってもらいたい。

参考文献:
高倉健『あなたに褒められたくて』集英社文庫
文春ムック『高倉健 KEN TAKAKURA 1956-2014』

Writer:大山くまお

※この記事はヨムミル!ONLINEの転載になります。

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放送情報

新網走番外地

放送日時:2017年11月1日(水)11:00~

チャンネル:東映チャンネル

※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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