2021年の映画『護られなかった者たちへ』で連続殺人事件の容疑者という難役に全身全霊で挑み、第45回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を獲得した俳優・佐藤健。同作のメガホンをとったのは、メジャー、インディーズの枠を超えて、骨太の作品を数多く手がけてきた『64-ロクヨン』の瀬々敬久監督だが、佐藤自身も「瀬々組は非常に居心地が良く、芝居に集中することができる」と語るほどに、厚い信頼を寄せている。
そんな瀬々監督と佐藤の初タッグ作品であり、佐藤に第41回日本アカデミー賞優秀主演男優賞をもたらした作品が2017年の映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』である。2015年に岡山の結婚式場が投稿した1本の動画がまたたく間に反響を呼び、本人たちの手によって書籍化。そこからさらに感動の輪が広がり、2017年には瀬々監督がメガホンをとり、土屋太鳳と佐藤健のダブル主演で映画化された。
結婚式を間近に控えた麻衣(土屋)は突如、原因不明の頭痛に襲われ、倒れてしまう。何とか心肺停止状態は逃れたものの、麻衣はそのまま意識不明のまま昏睡状態に陥る。その後、彼女の病気は「抗NMDA受容体脳炎」と診断される。いつ回復するかも分からない状況の中、婚約者の尚志(佐藤健)は、麻衣の両親から「麻衣のことはもう忘れて」と諭される。だが、それでも尚志は麻衣の回復を信じて出勤前に麻衣を見舞い続けた......。
揺るがない信念と大きな包容力を持つ尚志という役を演じることができる役者は佐藤健しかいない。そんな制作陣の強い思いを受けた佐藤はオファーを快諾。尚志と麻衣に起こった奇跡に感動するとともに、「こんな人生が現実にあるのか」という衝撃もあったという。だからこそ、この尚志が成し遂げたことを偽りなく演じ、多くの人に知ってもらいたいという思いで、この役に向き合うこととなった。
また、本作の撮影に挑むにあたり、佐藤は脚本作りの準備段階からキャラクターについてディスカッションを重ね、「どうしたらこの映画が良くなるか」という作り手の立場から、この役柄を深く掘り下げた。瀬々監督自身、役者とのコラボレーションを大事にする監督であり、佐藤のことを「日本の俳優の中でもとてもクレバーな人」と信頼を寄せている。なお、再タッグとなった『護られなかった者たちへ』の時もやはり、プロット段階からディスカッションを重ね、演技プランを綿密に練り上げたという。
なぜ尚志は8年もの間、奇跡を信じて待ち続けることができたのか。その問いかけに佐藤は、"8年待った"のではなく、"8年一緒にいただけ"という思いでこの役に向き合ったと語っている。瀬々監督が「いつものようにピリッとした表情ではなく、表情筋がゆるんだ芝居をされている」と指摘する通り、佐藤の包み込むような包容力と、芯の強さがひときわ胸に迫る。
文=壬生智裕
放送情報
8年越しの花嫁 奇跡の実話
放送日時:2022年4月7日(木)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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