金髪に派手なファッションの成田凌が印象的！若者たちの青春を描いたエモーショナルな群像劇

人の良い好青年から、狂気を秘めた連続殺人犯など、多彩な役柄を演じ、数々の映画やドラマで鮮烈な印象を残し続けている俳優・成田凌。優しげな瞳が印象的なイケメンで、182センチという長身という凡人離れしたビジュアルの持ち主にも関わらず、作品内ではその圧倒的オーラを消し、役柄になりきってしまうタイプの役者として知られている。

また、"イケボ"の持ち主としても知られる成田は、声優としても劇場版アニメにも参加。『君の名は。』では、ヒロイン・三葉の同級生、勅使河原克彦をナチュラルなトーンで好演。その後も『竜とそばかすの姫』で主人公・すずの幼なじみ、久武忍の秘めた優しさや誠実さを見事に声で表現したことも、記憶に新しい。最近ではドラマ「逃亡医F」で主演を務め、恋人殺しの濡れ衣を着せられた天才外科医を熱演した。そんな彼が2019年に出演した映画が『チワワちゃん』だ。

「ヘルタースケルター」「リバーズ・エッジ」などで知られる人気漫画家・岡崎京子のコミックを原作とした本作は、"チワワちゃん"の愛称で呼ばれていた夜遊び仲間・千脇良子が、東京湾バラバラ殺人事件の被害者だったことを、門脇麦が演じるミキが知るところから始まる物語。成田は、ミキの元カレでチワワちゃんの彼氏でもある大学生・ヨシダを演じている。

無造作な金髪に無精ヒゲ、派手なファッションに身を包んだ成田は、ヨシダの軽薄かつ刹那的な性格を全身から放つ気だるいオーラで表現。ヨシダに「お前だけ、なんか違う」という言葉でナンパされたというチワワちゃんの言葉を聞いたミキが、同じ言葉を彼に囁かれた時のことを回想するシーンでは、煙草を気だるげにくゆらせながら「...お前だけ、なんか違う」という殺し文句を、いつもより低めの声でセクシーに演じている。

傍若無人で天真爛漫なチワワちゃんが、とある建設会社の社長から強奪した600万円でバカンスに繰り出すミキたち。その道中から、ヨシダとチワワちゃんは濃厚なラブシーンを展開していく。チワワちゃん役の吉田志織と成田は終始、抱き合っては唇を重ね合い、恋に溺れる若者を体現。豪華なパーティでのお祭り騒ぎの中、花びらを敷き詰めたチャペルやナイトプールなどさまざまなシチュエーションで愛を交わす2人のビジュアルは圧倒的な美しさで、観る者を圧倒するだろう。

チワワちゃんという彼女がいながらも、浮気がやめられないヨシダ。それなのに彼女が仲間の1人であるナガイや、ユミに甘える姿を目撃して嫉妬し、偶然出会った女性をやり場のない思いの捌け口にする...。そんな欲望のおもむくままに生きる青年を、成田は肩の力が抜けた演技で見事に表現した。

チワワちゃんという青春を共に駆け抜けた存在の喪失をきっかけに、揺れる若者たちをエモーショナルかつ赤裸々に描いた本作。無軌道な青春の結晶のようなヨシダに確かな存在感を与えた成田の熱演に注目して欲しい。

文＝中村実香

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