円熟味あふれる南野陽子の演技が魅力「付き人女優・安野すみれ 楽屋裏事件ファイル」

「ナンノ」の愛称で親しまれ、80年代後半には中山美穂、浅香唯、工藤静香と並んでアイドル四天王として君臨した南野陽子。1985年のフジテレビ系ドラマ「スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説」に主演するなど、デビュー直後から女優としても活躍した。歌手としては「吐息でネット。」など9曲でオリコン1位を獲得するなど、十分な実績を残したが、1992年からは歌手活動を休止して女優業に専念。同年公開の映画『寒椿』、『私を抱いてそしてキスして』でヒロインを演じてその演技が評判となり、日本アカデミー賞主演女優賞を受賞している。特に後者は、当時社会を震撼させていたエイズを扱った作品で南野本人が企画して映画化したもので、自ら8kgの減量に挑んで撮影に臨んだ意欲作だった。

その後も1993年の映画『ドライビング・ハイ』にて女性レーサー役で主演するなど、数多くの作品に出演。順調にキャリアを重ねて演技にも円熟味を増していった。近年では2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」、2020年TBS系ドラマ「半沢直樹」、といった話題作にも出演し、存在感を見せている。

そんな南野が主演し、2009年にテレビ東京系で放送されたのが「付き人女優・安野すみれ 楽屋裏事件ファイル」だ。同作は大女優の付き人を務める女優が殺人事件の謎に迫るミステリードラマ。南野本人が立案した作品でもあり、精力的に撮影に臨んだ意欲作だ。

南野演じる小劇団の看板女優・安野すみれが大女優である野々上弥生子(木の実ナナ)の付き人になるのだが、その初日に弥生子が舞台で共演する人気女優・成瀬ひとみ(沖直未)が楽屋で急死。ひとみは弥生子が差し入れした芋羊羹を食べて倒れたのだが、警察の捜査により羊羹には青酸系の毒物が混入していたことが判明する。差し入れを楽屋に運んだすみれは殺人の容疑者として連行されてしまうというストーリー。すみれの容疑は晴れるのだが、以降は事件の真犯人を追っていくという展開だ。共演者は、すみれと共に事件の謎を追う若い刑事・新田甲介を杉浦太陽が演じるほか、井上順、近藤芳正、小林綾子、尾藤イサオといった芸達者が脇を固め、クライマックスまで演技合戦を堪能させてくれる。

本作の魅力は犯人捜しの謎解きに加えて、「大女優の付き人女優」という設定の妙にある。付き人でありながら女優でもあるとい点がミソだ。小劇団とはいえ看板を張るすみれは、容姿も美しくて華もある。プライドの高い大女優である弥生子は、どこか気に入らない。そこでひとみに辛く当たり、付き人いじめも見せるのだが、明るく元気に振る舞うすみれのたくましさが魅力的だ。明るくて芯が強い女性を演じたらピカイチの南野と、大物感たっぷりで嫌味を感じさせる大女優役の木の実とのコントラストが抜群。1962年に歌手デビューした木の実は、この時点で50年近い芸歴を誇っているので風格は十分。まさに適役だった。

記憶力が抜群で機転が利くすみれは、それが高じて事件の捜査に協力するのだが、若くてイケメンの新田刑事には快く協力するのに対し、近藤芳正演じるベテランの白坂刑事には一転して無愛想になる。その対比のコミカルさが絶妙なのだが、こんなさりげない場面にこそ南野の演技力がうかがえる。受ける近藤の演技も抜群で、本作の見どころのひとつになっている。

事件の謎を追うなかで、新事実が次第に明らかになっていき、やがて起こる第二の殺人。娯楽色の濃いミステリーではあるが、そのストーリーには次第に引き込まれていくはず。シリーズ化してほしいという声もあったが単発で終わってしまったことも惜しまれる良作であり南野ファンはもちろん、これまで見逃していた人にはぜひ見てほしいドラマだ。

文=渡辺敏樹

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放送情報

付き人女優・安野すみれ 楽屋裏事件ファイル
放送日時:2022年5月15日(日)9:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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