4月27日に発表された国際メディアコンクール、ニューヨーク・フェスティバルのドラマ部門・演技部門において、それぞれ銅賞を受賞したフジテレビ系の"月9"ドラマ「監察医 朝顔」と主演の上野樹里。
第1シーズンの初放送から約3年が経つが、「監察医 朝顔」が残した鮮烈な印象はいまだ色褪せない。2019年の夏クールで放送された際には、"月9"としては2年ぶりに全話2桁の視聴率を達成。放送終了後には続編化を望む声など多数のメッセージが寄せられたという。人々の記憶に刻まれている同作が、今回の受賞によって国際的にも評価された形だ。その第1シーズン全11話と、その後を描く「監察医 朝顔 特別編~夏の終わり、そして~」が、5月17日(火)よりフジテレビTWOにて順次放送される。
「監察医 朝顔」は、神奈川県にある興雲大学の法医学教室に勤める新米法医学者・万木朝顔(上野樹里)と、その父で野毛山署強行犯係のベテラン刑事・万木平(時任三郎)の"かけがえのない日々"を描いたヒューマンドラマ。朝顔が師と慕う茶子先生(山口智子)ら、法医学教室の個性豊かな仲間たちと、日々、自身の使命に取り組んでいく姿が描かれていく。
法医学という仕事を通して"死者と向き合うこと"と"生きた証を見つめること"を丁寧に描写する本作だが、魅力はそれだけではない。朝顔の母・万木里子(石田ひかり)が東日本大震災により現在も行方不明であるという事実――そんな辛い過去と地続きの日常の中で、共に寄り添いながら生きる朝顔と平の"父娘の絆"や"震災後の家族の在り方"も、ストーリーの重要な柱となっている。
印象深いのは、淡々と、そしてどこまでもリアルに映し出される朝顔と平の日常生活。座卓に座椅子、座布団が置かれた万木家の昔ながらの茶の間の風景や、朝顔と平が洗濯物の分け方についてあれこれ言い合いながらご飯を食べる何気ないシーンの積み重ね。そんな日常の端々で、万木家の表札に里子の名前があったり、冷蔵庫の扉には里子が被災前に書いたメモが貼ってあったり...里子の"生きた証"も存在し続ける。
特に、彼らの食事シーンは強いこだわりが感じられる。撮影時、演技を一切止めることなく、みそ汁やごはん茶碗を手にして口に運び、食事が終わってそれらを片付けるまで、カメラが回り続けていたという。説明描写ではなく、食事シーンは家族の日々の記録そのもの。食卓の周囲に漂うナチュラルな空気感こそ、本作最大の魅力とも言える。
やがて朝顔は平のバディでもある刑事・桑原(風間俊介)との間に子供をもうけ、第6話からは娘のつぐみ(加藤柚凪)が登場する。4人暮らしになった万木家の座卓には子ども用のいすが置かれ、机の角には危なくないようクッションがつけられ、カレーも子ども用と大人用に分けて作られ...と、どの家庭にもある子どものいる暮らしが細やかに描かれる。
上野や時任をはじめ出演者の確かな演技力で紡がれる日々の暮らしは、どんなドラマチックなシーンにも負けないぐらいリアル。だからこそ、少しずつ里子の不在を受け止めていく朝顔と平の痛みが胸を突く。
第10話、朝顔が学生たちに法医学の講義を行う場面は、そんな震災後の日常を積み重ねてきた朝顔のリアルな思いがほとばしる、忘れ難いシーンだ。約8分間に及ぶ講義シーン――朝顔の講義は、撮影時に学生役のエキストラたちや音声スタッフが自然と涙をこぼすほど力のこもったものだったという。
第1シーズン最終回後の"その後"が描かれる「特別編~夏の終わり、そして~」では、新たに撮影された朝顔と桑原の出会いが"エピソード0"として描かれている。第1シーズン初回で平と桑原が法医学教室にやってくる場面の"前日譚"ともいえるエピソードだ。そこから桑原の猛アタックとプロポーズ、入籍前夜の朝顔と平の父娘の会話もあらためて振り返る。
第1シーズンの反響を受け、2020年には第2シーズンが"月9"史上初となる2クール連続で制作されたのは周知の通り。震災の傷痕が決して消えないように、「監察医 朝顔」に刻まれるテーマも普遍的で、日々を"生きる"ということ、その一点に尽きる。いつの時代にも訴えかける家族のドラマの秀作として、胸に刻みたい作品だ。
文=酒寄美智子
放送情報
監察医 朝顔
放送日時:2022年5月17日(火)12:20~
監察医 朝顔 特別編~夏の終わり、そして~
放送日時:2022年5月26日(木)12:20~
チャンネル:フジテレビTWO ドラマ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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