5月19日に29歳の誕生日を迎えた神木隆之介。子役時代から活躍し、すでに20年以上のキャリアを誇る彼は、頭抜けた演技力と好感度を武器に幅広い作品に出演してきた。2023年前期に放送される連続テレビ小説の第108作「らんまん」では、日本植物学の父と呼ばれる牧野富太郎をモデルにした主人公に抜擢されるなど、常に進化し続けている印象だ。
俳優としてはもちろん、時には声優としても多彩な役柄に扮してきた彼が、池井戸潤原作ドラマに初挑戦し、新たな境地を開いたと言える作品が「連続ドラマW 鉄の骨」(2020年)だ。
連続ドラマWと言えば、WOWOW独自のドラマ製作プロジェクトであり、制約に捉われない自由なドラマ作り、映画界出身監督を中心とした本格的な演出、実力派俳優の起用...など、そのチャレンジングな姿勢で気骨のある良質な社会派作品を数多く生み出してきた。
働く人たちにスポットを当て、業界の裏側やそこで繰り広げられる人間関係を社会派エンターテイメントとして昇華させる池井戸潤作品との相性も抜群で、「連続ドラマW 空飛ぶタイヤ」(2009年)の映像化を皮切りに、「連続ドラマW 下町ロケット」(2011年)、「連続ドラマW 株価暴落」(2014年) 、「連続ドラマW アキラとあきら」(2017年)と相次いで映像化。時にはタブー視されるような社会の暗部にまで深く切り込む作品群は高い評価を集めてきた。
満を辞してドラマ化された「連続ドラマW 鉄の骨」の舞台は建設業界。公共事業などの大口案件を担当する部署へ異動になった若手社員が、自分の理想や正義と現実の狭間で葛藤する姿を通し、「談合は必要悪なのか?」という点に踏み込んでいく。
神木が演じているのは、中堅建設会社・池松組で働く入社4年目の富島平太。不器用ながら現場を愛していたが、ある日突然、畑違いの業務部へと異動することに。業界のフィクサーたちと交流を深めていく中、欲望やしがらみを目の当たりにする...というキャラクターだ。
池井戸作品の主人公らしく実直で不正を許さないヒロイックな人物かと思いきや、当然のように行われる談合に困惑しながらも、会社の命運を握る仕事にやりがいを見いだし、自らも関わりを持っていく。裏表を感じさせない神木自身のイメージを裏切るような新境地ともいえる姿が新鮮だ。
そんな主人公の脇を固めるのが豪華キャストたち。池松組の常務取締役で平太を業務部に呼び寄せた張本人である尾形には内野聖陽が扮したほか、業務部の先輩社員・西田役に中村獅童、大学時代から平太と交際している彼女・萌役に土屋太鳳、建設業界の談合を取り仕切るフィクサーの三橋には柴田恭兵...など、ビッグネームがずらり。骨太な物語にふさわしい実力派たちの演技によって、"正義とは何か"というヘヴィーな問いを見るものに問いかけていく。
2022年、池井戸潤自身が「ぼくの小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊」と明言し、作家人生の転機として位置付けてきた傑作群像劇「シャイロックの子供たち」のドラマ化も発表されている。しかも、「連続ドラマW アキラとあきら」「連続ドラマW 鉄の骨」に続く、鈴木浩介(監督)&前川洋一(脚本)の3度目のタッグであり、今から期待を募らせているファンも多いことだろう。
そんな待望の新作が控える今、「連続ドラマW 鉄の骨」を通してWOWOWが描く社会派ドラマの原点ともいえる池井戸潤作品の重厚な世界観に改めて触れてみたい。
文=HOMINIS編集部
放送情報
連続ドラマW 鉄の骨 (全5話)
放送日時:2022年6月3日(金)21:00~
チャンネル:WOWOWプラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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