2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で主演を務める小栗旬。野心とは無縁だった田舎武家の次男坊・北条義時が、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。鎌倉を舞台に繰り広げられるパワーゲームの中で、真っ直ぐな好青年から徐々に変貌していく姿を熱演している。子役時代から着実に経験を積んできた小栗は、高い演技力と圧倒的な存在感で日本を代表する俳優の1人として第一線で活躍を続けてきた。
そんな小栗が、「るろうに剣心」3部作でも知られる大友啓史監督と初タッグを組んだ映画が、『ミュージアム』(2016年)だ。本作は、巴亮介による同名人気コミックを映画化したノンストップスリラーエンターテインメント。主演を務めた小栗は、20代前半の出演作「ごくせん」・「花より男子」シリーズや、『ルパン三世』(2014年)や『新解釈・三國志』(2020年)とはまた違う一面を披露している。
雨の日に猟奇殺人事件が連続発生する。死体を見せることにこだわる犯人は、自分をアーティストと称し、犯行現場には必ず謎のメモを残す。カエルのマスクをかぶり、まるで犠牲者を制裁するかのような犯行に及ぶ"カエル男"。連続する事件の関連性を捜査する刑事の沢村は、次のターゲットが自身の妻であることに気づく。冷静さを失った沢村はカエル男の罠にはまり絶望へと追い込まれていく、というスリリングで狂気的なストーリーだ。
小栗は、妻や幼い息子との生活をないがしろにしがちだが仕事に執念を燃やす正義感溢れる刑事・沢村に扮した。ぶっきらぼうな物言いや無精髭もはまっていて、ほどよく歳を重ね貫禄も感じさせる中堅刑事の役が板についてきた。長身を生かした激しいアクションもキレ良く格好良い。残された手掛かりや違和感を見逃さず捜査を進める沢村を生き生きと演じている。犯人に近づくにつれて家族や仲間が巻き込まれ、次第に冷静ではいられなくなる沢村。犯人を追っていたはずが、いつのまにか極限状態に追い詰められていく。残忍な凶悪犯と対峙し、プライドをかなぐり捨てて命乞いまでする。家族を失った絶望や犯人に抱く殺意など負の感情をさらけ出した。
小栗の他に、妻夫木聡や尾野真千子、伊武雅刀に松重豊ら実力派キャストが脇を固める。犯人の得体の知れない気持ち悪さも映像として見事に表現され、精神的にハードなシーンの数々を演じ切った俳優陣の熱量の高さも感じられる。息つく間もない激しいアクションも見応えがあり、グロテスクな犯行も鮮烈に表現され大友監督らしい骨太な作品に仕上がった。ストーリーを牽引する小栗の演技は特に光るものがあり、今作での迫真の演技は見ものだ。
文=中川菜都美
放送情報
ミュージアム
放送日時:2022年6月10日(金)5:45~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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