運命に引き裂かれた姉妹の絆を描いたアニメーション映画『アナと雪の女王』は、主題歌の爆発的なヒットもあいまって、2014年を代表する1本として社会現象を巻き起こした。くしくも同じ年の秋、松下奈緒と石原さとみが姉妹役でダブルヒロインを務めたドラマ「ディア・シスター」が放送され、等身大のキャラクターたちが織りなす、切なくも温かなやりとり、そしてその奥底にある愛情の深さなどが話題を集めた。この話題のドラマがフジテレビTWOで放送される。
本作の主人公は、自由奔放で天真らんまんな妹・美咲(石原)と、松下演じる真面目で不器用な姉・葉月。高校卒業と同時に姿を消し、音信不通状態だった美咲は突如、葉月の前に姿を現し、姉のマンションに転がり込む。美咲に生活のペースを握られ、振り回される葉月。だが美咲にはとある秘密があった......。
本作の企画を推し進めた中野利幸プロデューサーはドラマ放送当時、石原、松下のキャスティングについて「姉キャラは松下さんしかいないし、妹キャラは石原さんしかいない」と太鼓判を押していた。2人にとっては同作が初共演作だが、クランクアップ時に石原が「本当の姉妹のようだった」と語るほどに息もピッタリ。時には激しいケンカもしてしまうが、実はお互いに思い合っている姉妹の、丁々発止のやりとりは見応えがある。
人気ドラマに数多く出演し、同性人気も高い石原だが、そのフィルモグラフィーの中でも、本作の美咲の人気は高い。天真らんまんで小悪魔的な愛されキャラぶりを遺憾なく発揮し、姉を振り回す美咲だが、実は姉思いで、意外にしっかり者。芯の強さも感じさせる、という役柄は非常に魅力的だ。さらに美咲が劇中で披露するファッションも、カジュアルなものからドレスまで幅広く、多くの反響を呼び起こした。
音信不通だった美咲が、なぜ帰ってきたのか。本作のモチーフとして言及されているのは、2003年公開の映画『死ぬまでにしたい10のこと』(イザベル・コイシェ監督)だ。同作は、ガンの診断を受け、余命2カ月の宣告を受けた23歳の女性アン(サラ・ポーリー)が、ノートに「死ぬまでにしたい10のこと」を書き出し、それをひとつずつ実行していくさまが描かれた。
子ども時代にその映画を姉と観て、深い感銘を受けたという美咲は、秘密の日記に「死ぬまでにしたい10のこと」を書き込み、姉の葉月には内緒で、そのリストをひとつずつ実行していく。だがなぜ彼女は人知れずそのリストを実行しようとするのか。やがてその行動の裏に隠された、切ない理由が明かされる。
一方、妹に振り回される側となる葉月を演じた松下は、実生活でも「妹」がいる「姉」だという。それゆえ妹に振り回されながらも、ついつい許してしまう、という姉の姿に共感したといい、その演技にリアリティーをもたらしている。性格も生き方も全く違う。ケンカも絶えず、傷つけ合ってばかりの凸凹姉妹だが、それでもお互いに足りない部分を補い合って共に生きていく。そんな姿に胸が熱くなるドラマとなっている。
なお余談だが、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEとEXILEを兼任する岩田剛典にとって、本作は連続ドラマ初レギュラー作となる。岩田演じる永人(ハチ)は、美咲にひそかに思いを寄せながらも、唯一無二の親友として美咲を温かく包み込む、という役柄だ。
美咲からは、自分がゲイであると勘違いされており、それがゆえに安心感を抱かれている。親友でありさえすればずっと美咲のそばにいることができる。だが日に日に美咲への思いが募っていくハチ。美咲が別の男の子どもを妊娠したと知ってもなお、美咲を支え続けようと決意する。
その献身的で、健気な姿は非常にせつなく、多くの視聴者の心をわしづかみにした。なお岩田は撮影中、石原のアドリブに内心うろたえてしまうこともあったというが、それが永人の芝居にリンクする部分もあったという。その他、葉月に思いを寄せるオーガニックカフェの店長、萩原陽平(平山浩行)など、男性キャラも魅力的なので、そこにも注目したい。
文=壬生智裕
放送情報
ディア・シスター
放送日時:2022年6月20日(月)12:10~
チャンネル:フジテレビTWO ドラマ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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