東野圭吾作品屈指の人気を誇る「マスカレード」シリーズを実写映画化した『マスカレード・ホテル』(2019年)と続編『マスカレード・ナイト』(2021年)。木村拓哉と長澤まさみというトップスターによる"バディもの"の醍醐味をたっぷりと味わえる、なんともゴージャスなミステリー映画だ。
人を見抜く天才刑事の新田(木村)と、ホテルの職務に忠実な一流フロントクラークの山岸(長澤)が、事件に挑む本シリーズ。映画化第1弾となる『マスカレード・ホテル』がスクリーンに登場したのは、2019年のこと。
東野が2011年に小説を刊行したところ映画化の話が続々と舞い込んだそうだが、担当者と相談してよほどのことがないかぎり映像化にゴーサインは出さないでおこうと決めていたのだとか。しかし"主人公の新田浩介=木村拓哉"と書かれた企画書を見て、悩んだ末に縁を感じて快諾。なんと小説の連載中に新田を描く際に漠然と思い浮かべていたのが、木村だったというのだ。運命的なキャスティングが叶い、東野は「長澤さん演じる山岸も聡明で気高い」と惚れ惚れとするなど、原作者が太鼓判を押しているのが本シリーズなのだ。
『マスカレード・ホテル』では、東京都内で3件の殺人事件が連続して発生。それぞれの事件現場に残された不可解な数字の羅列から、新田はそれが次の犯行現場を示すと推理し、ホテル・コルテシア東京が4番目の犯行現場になると突き止める。警察はホテルでの潜入捜査を決断し、新田をフロントクラークにするなど、捜査員たちを配置。新田は彼の教育係として任命された山岸と共に、ホテル業務をこなしながら捜査を進めていく。
映画を見れば、木村×長澤の抜群のコンビネーションに魅了されること間違いなし。次々と現れる素性の知れない宿泊客を刑事として"疑う"新田と、ホテルマンとして彼らを"信じる"山岸は、立場も性格も正反対。"水と油"のような存在だ。
山岸は新田の教育係になったものの、「ポケットに両手を突っ込んだまま話すのは問題外」「歩き方、姿勢を直してください」「客ではなく、お客さまです」と新田の問題点を指摘し、一方の新田も不満タラタラ。まさに"出会いは最悪"といった状況で、ぶつかり合いながら日々を過ごしていく。
そんな2人が反発しながらも、次第に協力プレイで宿泊客を喜ばせ、事件解決にまで導いてしまうのだから、なんとも面白い。2人に共通しているのは、誠実でとことん熱いところ。お互いの仕事への情熱を知り、強固な絆を結んでいくのだ。
そして前作が大ヒットしたことから実現した続編『マスカレード・ナイト』では、大みそかに殺人事件の犯人がホテルに現われるという密告を受け、新田と山岸が再び協力。全員仮装、全員容疑者という500人以上のパーティー客の中から殺人犯の"仮面"を暴いていく。
「変わっていないな」と呆れながらも、お互いの動向が気になっていた新田と山岸。再会を大袈裟に喜んだりはしない彼らだが、前作での事件解決を経た2人の間には、どんな瞬間も双方への揺るぎない信頼感が見えてくる。新田と山岸がチャペルでそれぞれの仕事について吐露するシーンは、彼らが最高のバディである理由、そして相手との出会いによって変化を遂げていたことが分かる感動的な場面だ。
いつもひょっこりと現れて、ズバリと推理力・行動力を発揮してしまうクセ者刑事の能勢を演じる小日向文世の存在感もニヤリとさせられるものがある。渡部篤郎、石橋凌、梶原善ら刑事側とホテル側のキャストにも個性派が顔をそろえたほか、宿泊客を演じる俳優陣も画面の隅々まで見たくなるほど面白いメンバーが続々と登場する。ホテルという空間で巻き起こる豪華絢爛なエンタテインメントを、ぜひ堪能してみてほしい。
文=成田おり枝
放送情報
マスカレード・ナイト
放送日時:2022年7月16日(土)13:00~
チャンネル:WOWOWプライム
マスカレード・ホテル
放送日時:2022年7月16日(土)17:45~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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