長澤まさみ岡田将生が繊細な演技で罪悪感と喪失感を表現!いくえみ綾の最高傑作が原作の映画 『潔く柔く きよくやわく』

映画『潔く柔く きよくやわく』で主演を務めた長澤まさみ、岡田将生
映画『潔く柔く きよくやわく』で主演を務めた長澤まさみ、岡田将生

2019年にデビュー40周年を迎え、第一線で活躍し続けてきた少女漫画界のカリスマ・いくえみ綾。作者の描く魅力的な男性キャラクターたちは、"いくえみ男子"とカテゴライズされるほど高い人気を誇る。「バラ色の明日」や「かの人や月」と名作を挙げればきりがない。中でも、2009年に第33回講談社漫画賞を受賞した漫画「潔く柔く」は2013年に累計295万部突破し、いくえみ綾の最高傑作と名高い。そんなベストセラー漫画を映画化した『潔く柔く きよくやわく』(2013年)。

距離感が近づく長澤まさみ、岡田将生
距離感が近づく長澤まさみ、岡田将生

(C)2013「潔く柔く」製作委員会 (C)いくえみ綾/集英社

本作は、喪失感の先にある希望と再生を描く感動のラブストーリー。高校1年の花火大会の夜にカンナはクラスメイトから告白される。その時、幼なじみのハルタはカンナの携帯に最後のメッセージを残し、交通事故で死んでしまう。その事故から恋が出来なくなってしまったカンナは、15歳の心のまま年を重ねていく。大人になり映画宣伝会社で働いているカンナは、出版社で働く赤沢禄と出会う。心に土足で踏み込んでくるような禄に反発しながらも、徐々に彼の存在が気になっていく。一方、明るく悩みなど無いように見える禄にも実はある辛い過去があった。ぶつかり合いながらも、惹かれ合う気持ちに逆らえないカンナと禄。心に傷を抱えた2人が出会った時、止まっていた時間が動き出す。

15歳の夏に幼なじみを亡くして恋することが出来なくなった主人公・瀬戸カンナを長澤まさみが演じた。2011年の映画『モテキ』での史上最強のモテ女子や、2018年からの大ヒットシリーズ「コンフィデンスマンJP」でのコメディエンヌぶりなど、今や硬軟自在な演技派女優となった長澤。不治の病に死する少女を熱演した『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)がもはや遠い昔に感じるほどだ。本作では、心の成長が止まったまま大人になってしまったカンナを自然体で演じている。高校生らしいピュアなあどけなさと、傷を抱えて生きる社会人になってからの表情の違いも秀逸だ。過去に囚われ恋をすることを恐れながらも、少しずつ禄に惹かれていく心情を繊細に表現した。田山涼成演じるマスターに傷を打ち明ける場面や、波瑠演じるかつての親友・朝美に心の内を言い当てられる場面の一瞬の表情に引きつけられた。

小学校時代に同級生と事故に遭い自分だけ生き残った過去を持つ、もう1人の主人公・赤沢禄は岡田将生が演じた。爽やかな青年役のイメージが多かったが、2010年の映画『告白』や『悪人』で演技の幅も見せた岡田。昨年の話題作『ドライブ・マイ・カー』でのゾッとするほどのヒールぶりも見事だった。本作では、やたらとキラキラしたり爽やかすぎることもなく、ちょっと嫌味でぶっきらぼうなところもある禄をリアルに演じている。いそうでいない"いくえみ男子"を見事に体現した。カンナへ向ける言葉が優しく染みる。どこか飄々としていながら、内に溜め込んだ深い悲しみを時折感じさせる瞳も印象深い。池脇千鶴演じる亡くなった同級生の姉とその娘とのやりとりが涙を誘った。

長澤と岡田の他にも、安定した演技力と温かさが光った池脇千鶴や、高良健吾、波瑠、中村蒼ら実力派俳優たちが脇を固める。2006年に『ただ、君を愛してる』で劇場長編映画デビューして以来、恋愛映画の名手と呼ばれる新城毅彦監督らしい細やかな演出で、彼らが演じる登場人物の機微が丁寧に表現されている。大切な人を亡くしても、また人を愛することができるのか。罪悪感と喪失感を抱えて生きてきた2人が過去と向き合い、一歩を踏み出すまでを描く。長澤と岡田によって喪失と再生が見事に表現され、まさしく心のロードムービーといった趣のある作品に仕上がっている。

文=中川菜都美

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放送情報

潔く柔く きよくやわく
放送日時:2022年8月11日(木)09:45~、8月16日(火)04:30~、8月31日(水)13:00~
チャンネル:WOWOWプライム、WOWOW4K、WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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