一方、東慶寺に駆け込んだ女・じょご役の戸田は、結婚時の境遇から夫に文句の言えない立場で、東慶寺でも無学な自分に自信のないキャラクターとしてじょごを熱演。いざという時は思いもよらない力を見せるものの、普段はおどおどとした立ち居振る舞いをしていたが、東慶寺での暮らしの中で次第に自信と"強さ"を身に付けていく。この変化に合わせて、背筋の伸びや表情、動き、目に宿る力がどんどんと強くなっていく様子は圧巻。女性の強さが確立されていく過程をしっかりと見せてくれる。
このそれぞれの演技の素晴らしさだけでも筆舌に尽くし難いのだが、信次郎とじょごの関係性の変化を表す2人の芝居は極上!信次郎は御用宿の居候の医者見習い、じょごは男子禁制の寺で修行中の身という互いの立場が故の、言葉などの直接的な表現を用いずに次第に惹かれていく淡い恋愛表現に、いじらしさを感じて思わず応援したくなる気持ちを煽ってくれる。共に、決して口にしない気持ちをオーラのように滲み出る好意だけで表すというのは、大泉と戸田だったからこそ到達した境地だったのではないだろうか。
"訳あり女"たちのそれぞれの人生に触れて笑って泣きながら、大泉と戸田という実力派の俳優同士だからこそ成し得た"芝居を超えた芝居"を堪能してほしい。
文=原田健
放送情報
駆込み女と駆出し男
放送情報:2022年9月8日(木)17:00~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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