稲垣吾郎が10役以上を演じ分ける!整形でほとんどの大人たちが同じ顔を持つ不思議な世界が舞台のダークファンタジー

容姿へのコンプレックスがテーマの本作の前半で、稲垣はインタビュアーとして登場。妻(吉田)がどんどん若い頃の容姿になっていくことに混乱する夫を俯瞰で見て、登場人物たちに質問を投げかける。しかし、これは物語の序章に過ぎず、一連の インタビューは高校生たちが教室でVRゴーグルを着けて見ていた"ストップ美容整形"を啓発する映画だったことが3話目で判明。黒の服を着たクールで知的なインタビュアー(稲垣)は監督だった。そして、教室で生徒たちに映画を見せている丸眼鏡にベストを着た温和そうな先生の顔もまた稲垣。大人たちがトレンドに乗って我も我もと美男、美女の稲垣と加藤の顔になった時代があったことがわかるまで視聴者は翻弄されていく。

フォーカスは途中から高校生の誠也(青木柚)、凜(見上愛)、れいら(岡本夏美)、貴志(山脇辰哉)、中山(秋元龍太朗)に合わせられるのだが、特に衝撃的だったのはパパ活をしているれいらが出会うビジネスマンを演じた稲垣。2人でカラオケに行って懐メロを歌うまでは普通だったが、突然、「れいらちゃん、マッサージできる?」と二の腕の筋肉を触らせたり、スカートの中にマイクを入れたりする変態男に豹変。下心満載の男を演じる稲垣の演技が「こんな人、実際にいそう」と思わせる。この出来事のトラウマから、れいらは親が誕生前に遺伝子操作をしたことで稲垣の顔になっている友人・中山を避けるようになる。

誠也の父親役の稲垣も面白く、いつも頭にタオルを巻いているラフなスタイルで、ストーリーの中で最も明るい役柄。「なぜ整形したのか?」という息子の質問にも「母さんだけ美人になるの嫌だろ?」とあっけらかんと答えるなど、表情、仕草の違いも含め、不思議の国の大人たちをみごとに演じ分けている。

■分断された世界で生きる大人と子供の対比が視聴者にさまざまな疑問を投げかける

整形しないことを選ばなかった少数の大人たちが"プレーン"と呼ばれ、差別されている不思議な世界でも、授業が終わったらカラオケに行ってはしゃいだり、告白できずモヤモヤしたり、容姿にコンプレックスを抱く高校生5人組はいつの時代も変わらない思春期真っ只中。見方によっては大人たちがデジタルで子供たちがアナログのようにも映る。誠也の幼なじみで、プレーンの大人たちに接することによって美容整形について考えるようになる凛。トラウマを克服しようとするれいら。傷つき、傷つけることに敏感な高校生たちの会話も興味深い。

同じ顔を持たない彼ら、彼女たちは大人たちを見て、どんな生き方を選択していくのか。見る人にさまざまな視点から疑問を投げかけるドラマである。

文=山本弘子

この記事の全ての画像を見る

放送情報

きれいのくに
放送日時:2022年11月7日(月)22:50~ほか
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード