一方で、母親としてはしっかりしていて、娘の冬子(松山愛里)のために、離婚した圭史の母と養育費の話をする時の目力は息を飲むほど。カップ焼きそばをかきこみながら友達のように冬子と語らうシーンもあれば、自分の思いが届かない時には娘に怒ったりもする。魔性の女と母親を同時に演じても違和感がないのは、永作の持ち味が活きていると同時に、その演技力の高さによるものと言えるだろう。
詩文が1人でいるシーンでは、特に永作の演技力が発揮される。英児が試合で倒れて病院に運ばれ、椅子に座り1人待つ時の呆然とした寂しげな表情には、不安と英児への思いが押し寄せている様子が伝わってくる。入院している英児のことや、突如持ち上がった冬子の養子の話などさまざまな出来事が重なった時に、くすんだ和室で布団を敷きながら1人涙を流すシーンは見ていて切なくなるほどだ。
しかし、何があってもカラっとしていて、自分の思い、自分の生き方を貫く詩文の姿、それを演じ切る永作の力量には驚嘆するほかない。
詩文の物語が紡がれると同時に、仏壇屋で主婦として平凡な生活を送っていた満希子や、才能ある外科医だが男っ気のないネリの恋模様も描かれる。満希子は息子の家庭教師に言い寄られ、ネリは詩文の恋人だった英児を通じて男というものを知る。そして詩文がそこに絡み合い、大きな事件に巻き込まれつつも、最後は皆が今までとは少し違った人生を歩んでいく。
永作博美をはじめ、寺島しのぶ、高島礼子ら実力派の女優陣によって、時にシリアスに、時にコミカルにアラフォー女性たちの生き様を描き出すドラマ「四つの嘘」。物語の展開はもちろん、彼女たちの演技をじっくり味わいながら楽しんでほしい。
文=堀慎二郎
放送情報
四つの噓
放送日時:2022年12月4日(日)21:55~
チャンネル:テレ朝チャンネル2
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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