長澤まさみの演技の幅と深みに惹きつけられる!高橋一生の繊細な演技も魅力の映画「嘘を愛する女」

2018年1月に公開された映画「嘘を愛する女」は、長澤まさみと高橋一生が共演し、恋人の嘘に翻弄されるキャリアウーマンの運命を描いたラブサスペンス。オリジナル映画を募集する「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM」の第1回グランプリを受賞した企画を映画化した作品である。

(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会

食品メーカーに勤める川原由加利(長澤)は、研究医である優しい恋人・小出桔平(高橋)と同棲5年目を迎え、公私ともに充実した日々を送っていた。そんなある日、自宅で桔平の帰りを待つ由加利のもとに、警察が訪ねてくる。桔平がくも膜下出血で意識を失っているところを発見されたが、彼が所持していた運転免許証や医師免許証が偽造されていて、職業も名前も全てデタラメだったことが判明したのだ。

由加利は桔平の正体を突き止めるべく、私立探偵の海原匠(吉田鋼太郎)に調査を依頼。やがて、桔平が書き溜めていた700ページに及ぶ未完成の小説が発見される。海原の力を借りて、小説の内容から瀬戸内海のどこかに彼のルーツがあると考えた由加利は、桔平の秘密を追って現地に旅立つ。なぜ桔平は全てを偽り、由加利を騙す必要があったのか。そして彼女は「名もなき男」の正体に、辿り着くことができるのだろうか...。

ミステリアスなシークエンスが散りばめられたストーリーに冒頭から釘付けになってしまうが、本作の監督を務めたのはCMディレクターとしても活躍している中江和仁。ゆうちょ銀行や資生堂、サントリーなど、数多くのCMを手掛けながら映画監督としても高く評価され、「大豆田とわ子と3人の元夫」(フジテレビ)などテレビドラマの演出も手掛けている。

(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会

本作のストーリーは、中江監督が目にした新聞のコラムから着想を得たものだという。夫が自分の名前や過去を偽っていたという女性の実話をもとに、オリジナルのストーリーとして構築したらしい。ヒロインを演じた長澤は、中江監督から熱烈なラブコールを受けて本作に臨んだとのこと。直筆の手紙には元ネタとなった新聞記事のコピーまで添えられており、「監督の熱量の高さが感じられた」と語っている。中江監督から注文されたのは、「とにかく嫌な女を演じてほしい」というものだったという。確かに、自己中心的で絶対に自分を曲げない女性である由加利には、視聴者として共感できない面もある。それでも、何事にも前のめりになり過ぎる彼女の性格は、桔平への一途な愛情も感じさせる。愛されていたはずの男に騙されたと知ってショックを受ける彼女の強さや行動力には、視聴者もむしろ納得させられると言えるだろう。

ミステリアスな作品だけにネタバレは控えておくが、本作の魅力はやはり女優・長澤まさみのポテンシャルに尽きると言ってもいい。2004年公開の映画「世界の中心で、愛をさけぶ」で第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞に輝いた頃から、演技の幅と深みを感じさせていたが、年を重ねるごとに芝居も一段と上手くなり、魅力を増している。余談だが、本作と同じ2018年にフジテレビ系で放送されたドラマ「コンフィデンスマンJP」で、長澤は悪者から大金をだまし取る詐欺師の役で主演している。名前や経歴を偽る立場だった点が本作と逆になっている点が興味深い。

相手役の高橋一生も、相変わらずの存在感と抑えた演技で好演。どの作品に出演しても、内面から丁寧に糸を1本ずつ紡ぐような繊細な役つくりをしているように思わせる。主役でも脇でも常に彼独特の空気管を醸し出せる稀有な俳優だと言えるだろう。

主演2人の演技合戦を中心に、エンディングまで見どころが尽きない映画「嘘を愛する女」がWOWOWで放送される。長澤は、放送中のドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」(フジテレビ系)でもエースの座から転落した女子アナウンサーを演じて話題だ。こちらも冤罪事件の真相究明をする話で、実際の事件をモチーフにしているところなど本作との共通点もあるので、同作のファンにも薦めたい映画である。

文=渡辺敏樹

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放送情報

嘘を愛する女
放送日時:2022年12月21日(土)13:00~
チャンネル:WOWOW4K
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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