西田敏行と西城秀樹が複雑な家族のカタチを熱演した「明石貫平35才」

西田敏行の民放初主演作となる「池中玄太80キロ」。亡くなった妻が残した3人の娘たちと暮らすことになったカメラマン・池中玄太の子育て奮戦記を描いた心温まる物語は、1980年のパート1以降、10年以上にわたってシリーズが制作される国民的人気番組となった。

そんな同作のスタッフによって制作されたもう1つのハートフル作品が、「明石貫平35才」だ。

主演を引き続き西田が務めていることもあり、今でいうスピンオフに近い作品といえるかもしれないが、キャスト陣は不世出のスーパースター・西城秀樹や阪神タイガースなどで活躍した元プロ野球選手の江本孟紀らに刷新。その豪華キャスト陣で「池中玄太80キロ」に負けず劣らずの家族愛や男同士の友情を描いている。

本作の主人公は、三重県の五ヶ所の魚市場でセリ師として働く義理人情に厚いバツ1の明石貫平。気楽な独身生活を謳歌していたある日、離婚した妻・千恵子の娘・日出子が東京から訪ねてくる。聞けば、千恵子がレポーターの並河研三と再婚し、新婚旅行中なので会いに来たという。驚いた貫平が日出子を送るため一緒に上京したところから物語が始まる。

その後、一度は三重県に戻った貫平。しかし、千恵子が交通事故で亡くなり、日出子と研三の親子関係が上手くいっていないことを知ると並河家を再訪。血の繋がらない日出子を引き取ろうとするが、すったもんだの末に並河家に居候することになり、日出子の子育てに大きく関わっていくことになる。

最近は「ドクターX」の蛭間重勝のようなクセのある役を演じることもある西田だが、あらためて本作を見返すと困っている人を放っておけないお人好しな役柄こそが真骨頂であると再確認させられる。

そして、忘れてはいけないもう1つの見どころが西城だ。愛嬌のある可愛らしい青年役や、ドロドロとした人間関係を生き抜くダーティーな役回りを時代によって演じてきた西城だが、今回演じる並河優はスーパーマーケットの店長として働くしっかり者の好青年。家庭でも仕事でも大黒柱として獅子奮迅の活躍を見せる彼はまさに頼れる兄貴という表現がぴったり(実際は研三の弟だが)で、どちらかといえば西城本来の姿に近いのかもしれない。

今ではもう二度と叶わない西田と西城の強力タッグだが、本作はソフト化されておらず、言わば幻の共演作と呼べるもの。次はいつ見られるかわからない2人の掛け合いをしっかりとその目に焼き付けてほしい。

文＝安藤康之