吹雪の中、親分である安原を地中に埋め、その周りをジープで走りながら引退宣言を要求する川田を映す冒頭から、圧倒的な画力と作品が発する熱量、息もつかせぬジェットコースター展開など、脂が乗り切っている当時の深作監督の、作品に懸ける並々ならぬ熱い思いが十二分に伝わってくるのだが、その監督の熱量に対等に渡り合っているのが松方の存在感だ。
作品の画力、ストーリー展開、迫力などに埋もれることなく放つ彼の輝きは、「松方でなければこの作品は成立しなかっただろう」と妙に納得されられてしまうほど。
川田は、やくざ社会ならではの上下関係など意に介さず、腕っぷしが強く何をしでかすか分からない人物で、組織としても目に余る存在というキャラクター。大組織にも臆することなく攻め入るシーンが続くのだが、その時の松方の「天上天下唯我独尊」を地で行くようなオーラに、息をするのも忘れてしまう。細かく言えば、相対する目上の人物に向ける眼差しの鋭さや言葉とは裏腹に本心は服従していないことを表す目の奥に宿した光、不遜な態度、強者ならではの声の荒げ方など、挙げるとキリがないのだが、それら全体を含めた体中から醸し出される日本刀のような圧倒的で鋭い存在感が、危険さ故の美しさや魅力をはらんでいてつい目を奪われてしまう。
大物のイメージとは一線を画す、ギラギラとした力がみなぎっている時代の松方の圧倒的な存在感を感じて、"昭和の銀幕スター"たるゆえんに触れてみてほしい。
文=原田健
放送情報
北陸代理戦争
放送日時:2023年1月1日(日)15:00~(無料放送)
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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