メルセデスのルイス・ハミルトンとフェラーリのセバスチャン・ベッテルが、昨年に続いて2年連続でタイトル争いを演じた2018年。しかし、その内容は昨年とはやや様相が異なっていた。昨年の戦いは、4連覇を目指す絶対王者のメルセデスに、2007年を最後に王座から遠ざかっているフェラーリが挑むという構図だったが、今年は開幕戦からフェラーリがリード。序盤7戦を終えた段階でもベッテルが選手権首位に立ったまま、中盤戦へと突入した。
しかし、中盤戦に入るとプレッシャーからかベッテルがミスを連発。フランスGPとイタリアGPではスタート直後にメルセデスのマシンと接触してスピン。ドイツGPでは降り始めた雨に足をすくわれてリタイアし、首位の座をハミルトンに明け渡してしまう。 しかし、この時点でベッテルとフェラーリには挽回するチャンスはまだ残されていた。それは、車体とパワーユニットの性能に関して、フェラーリはメルセデスとほぼ互角だったからだ。そのことは、それぞれチームメートであるキミ・ライコネンとバルテリ・ボッタスのポイントが、最終的に251点と247点だったことでもわかる。
タイトル争いの行方を決定づけたのは、終盤戦でのハミルトンとベッテルのドライバーとしての差だった。終盤戦に入るとハミルトンはミスを犯さなかっただけでなく、タイヤやエンジンに問題を抱えた状況でもあきらめずに想定を上回る結果を残して、着実にポイントを稼いだ。これに対して、ベッテルは日本GPとアメリカGPで再びミスを犯して自滅していった。
ベッテルとフェラーリにとって、不運だったのはシーズン途中でフェラーリの会長を務めていたセルジオ・マルキオンネが7月に急逝したことだった。強力なリーダーシップを失った跳ね馬が8月以降失速したことは、ベッテルが8月末のベルギーGPを最後にそれ以降、一度も優勝できなかったことが証明していた。
2年連続でベッテルとの戦いを制したハミルトンは、通算5度目のタイトルを獲得。これは1950年代に活躍したファン・マヌエル・ファンジオに並んで歴代2位タイの記録。歴代トップの記録を持つミハエル・シューマッハの7回も夢ではなくなった。コンストラクターズ選手権もメルセデスが制して、5連覇を達成。来シーズンは、フェラーリが持つ歴代最長連覇記録(6回/99年〜2004年)に挑戦する年となる。
文=尾張正博(おわりまさひろ) 1964年宮城県生まれ。93年にフリーランスとしてF1の取材を開始。98年から2001年まで、F1速報誌の「GPX」誌の編集長を務めた後、02年から再びフリーランスとしてF1グランプリを全戦カバー。NumberWeb、F1速報、東京中日新聞、オートスポーツなどに寄稿。主な著書に「トヨタF1、最後の一年」(二玄社)、「F1事情通読本」、「F1全戦取材」(東邦出版)などがある。
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放送情報
2018 F1グランプリ 総集編
放送日時:2018年12月31日(月) 10:10~ほか
チャンネル:フジテレビNEXT
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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