【前編】ライオンズ戦全試合観戦の"獅子党"あさりど・堀口文宏が教える、ファームに詰まった「旨味」

西武ファン歴40年で、テレビ埼玉の応援番組でMCを務めている、あさりどの堀口文宏。今も球場に足繁く通いつつ、テレビ中継を含めて一軍は全試合観戦、ファームも「中継があるものはすべて見る」という筋金入りの"獅子党"だ。そんな堀口だからこそ語れる西武の魅力、ファームならではの楽しみ方とは――。

■埼玉県の"恵まれた環境"

僕の実家は埼玉県坂戸市にあり、商店街で商売をしていました。読売、毎日、朝日の新聞販売店が近くにあって、売り込みに来るんです。それぞれとうまくお付き合いするために、1月から4月は読売、5月から8月は毎日、9月から12月は朝日というように4カ月ごとに契約していました。

新聞を定期購読契約すると景品をもらえて、毎日新聞は西武戦のチケットをくれました。親と一緒に観戦に行くと、生で見る迫力や球場の大きさに圧倒されたことをよく覚えていますね。平日の夜になると「テレビ埼玉でライオンズの中継やっているぞ!」となり、全国放送の巨人戦ではなくテレ玉を見る。自然とライオンズが好きになっていきました。

当時の僕は小学生で、「俺、あれ見たよ」と学校で自慢したい年頃だったんです。「清原(和博)のホームラン見たよ」とか、「昨日の東尾(修)の200勝、オヤジと見に行ったよ」とか。そうやって言えるのはチケットがあるからで、「じゃあ毎日新聞、頼んでよ」となる。毎日新聞の戦略が僕を作ったわけです(笑)

地元が埼玉なので周囲にはジャイアンツファンが一番多いけれど、ライオンズファンもたくさんいて応援しやすい環境でした。「友の会」というファンクラブにも入るようになり、球場に行く回数は年々増えていきましたね。

■第二球場のプレミアム感

坂戸から所沢まで車で行くと、1時間近くかかります。渋滞することも考えて余裕を持って出発し、早めに着くと、西武球場(現ベルーナドーム)の隣にある西武第二球場(現CAR3219フィールド)で試合をやっていました。そこで7、8回くらいまで見ると、入場時間の4時になるから今度は一軍のナイターを見に行く。それが僕のルーティンになっていきました。

第二球場は外周に柵もないような環境で、どちらかと言うと草野球場に近いようなイメージですかね。一軍でベンチから外れた"上がり"のピッチャーも普通にいて、例えば左のワンポイントの小田真也を見つけて「おっ、小田だ!」って声をかけると、「はい、サイン書いてあげるよ」って答えてもらえる。

デーブ大久保(大久保博元)には色紙に「ホームラン王」と書いてもらいました。「本当にホームラン打ってよね」「うるせえな」とか、そんなやりとりをした思い出があります。そういう選手が一軍に上がるとうれしかったですね。

ファンからすると、一軍のグラウンドは"絶対に入っちゃいけない"ところじゃないですか。でも二軍は、「下手したら入れるんじゃないか」っていう雰囲気がどこかにある。特に第二球場はそういう"緩さ"がありました。ネットの向こうに自分と同じ目線で選手がいるんですよ。それが逆にプレミアムな感じで、行かない選択肢はなかったですね。

ファームの魅力って、友だちに会いに行くような感覚です。電車の中で「今日、誰がいるかな?」とワクワクして、「たぶん、◯◯が登録抹消になったからいるんじゃない?」っていう会話を楽しみながら行っていましたね。

第二球場は2018年から改修工事が始まり、2020年から「CAR3219フィールド」として新しくなりました。ライオンズを取材する立場とすれば、二軍の頃からショーアップされた球場でやっていた方が一軍とのギャップが少ないから、ファームの選手にとって昇格したときに活躍しやすいのかなと思います。

でも正直、第二球場を新しくすると聞いたときは「ええ?」って思う少数派でした。新しくすることがダメというわけではなくて、小さいときから選手と同じ目線で見られた"夢の空間"がなくなっちゃうのかなという思いがあったんです。それくらい僕は第二で育ち、ライオンズにハマった場所でした。

西武第二球場で撮影する堀口文宏
西武第二球場で撮影する堀口文宏

写真提供:テレビ埼玉

■ファームを見る人の特権

「ライオンズは若手野手が伸びる」とよく言われますが、その裏には伝統の"アーリーワーク"があります。文字通り早朝練習のことで、栗山巧、中村剛也、中島裕之(現巨人)が若手だった頃には打撃コーチの田邊(徳雄)さんが育てていると話題になりました。

ナカジと中村選手は甲子園に出ていない選手です。山川(穂高)選手をファームの頃から見ていた人は同じ感覚だと思いますけど、「甲子園に出ていないのに、こんなにすごいバッターがいるんだな」って感じました。今でこそ知られてきたけど、埼玉に住んでいる人には「富士大学、どこですか?」っていう感じじゃないですか。それが「山川がモノになりそうだぞ」となってから、外崎修汰、多和田真三郎、佐藤龍世(現日本ハム)など富士大学からどんどんプロに入ってくるようになりました。

ライオンズのファームには、そうした"めっけもの"がたくさんいます。今、ファームで頑張っている一人が赤上(優人)投手。出身は東北公益文科大学。どこですか?初めに聞いたときはそう思ったけど、同大学初のプロ野球選手です。

ライオンズはそういう選手を引っ張ってきて、しかも一軍で結構いい活躍をしている。そう考えると、その選手のファーム時代を見ていなかったら損ですよ。一軍に上がってから見るのではなく、本当の旨味があるのはファームです。

例えば、森(友哉)選手は重心をかなり低くする打撃で1年目から一軍で出場しました。高校時代からやっていた打ち方ですけど、どんどん伸ばそうと取り組んだのがファーム時代です。ブルペンコーチだった秋元(宏作)さんがキャッチャーとして育て、二軍育成コーチの赤田(将吾)さんは夏場にバテてくると、打撃の重心が上に来ちゃうから下にしっかり落とすよう一緒に取り組んだ。

森選手が一軍に定着するのと同時期に、2人のコーチも上を担当するようになりました。そうやって活躍を支えてきたんです。そういうことを語れるのは、ファームまで見ている人の特権だと思います。

■ずっと見ているから、違いがわかる

一つの守備位置が専門でプロに入ってきた選手が、出場機会を増やすために違うポジションを守ることがあります。その場合、まず実戦経験を積むのはファームです。そうした普段とは違うことを見られる面白さもファームにはあります。

去年、ライオンズはセカンドの外崎選手が開幕早々にデッドボールで離脱となり、控えで入った山野辺(翔)選手もケガをしました。そこにはまったのが山田遥楓選手。そういう事態になった場合、山田選手にもし何かあったときに備えてファームで誰かにセカンドをさせておかないといけない。それが佐藤龍世選手(現日本ハム)でした。

それまでサードかファーストしか守ったことがない佐藤選手が、ファームではセカンドで起用され始めたんです。「そういうことか!」と思って話を聞きにいくと、「初めてですよ。全然慣れなくて」と言っていました。

結局、佐藤選手はその年の8月にトレードで日本ハムに行きましたが、出場機会を得たのはセカンドです。レギュラーの渡邉(諒)選手が調子を落としてファームに落ち、(ロニー)ロドリゲスも調子が上がらず、佐藤選手がセカンドで34試合に出場しました。去年の日本ハムでは二番目の多さです。

ファイターズファンにしたら「佐藤龍世ってセカンドなんだ?」と思うかもしれないけど、「違う、違う。ライオンズ時代にこういう経緯があって」とファームから見ている人は言えるわけです。西武のときに一軍でセカンドを守ることは一度もなかったけれど、その経験が日本ハムに行ってから活きています。

こういうことがあるから、プロ野球ファンにはファームをずっと見ていてほしいんです。見続けているからこそ、違いがわかる。そうした旨味がファームには詰まっています。

インタビュー/構成=中島大輔 企画=This

【インタビュー後編はこちら】 ※後編は4月23日12時に公開予定

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