【後編】なぜ中日の若手投手は次々と伸びるのか。その秘訣はファームの「キャッチャー」にあり?カルロス矢吹が注目する捕手とは

『月刊ドラゴンズ』で「勝手にドラゴンズグッズ会議」という連載を担当する作家のカルロス矢吹。近著『日本バッティングセンター考』が代表するように独特な見方でさまざまな物やカルチャーの面白さを発信しているカルロスは、子どもの頃から大好きな中日とファームをどのように楽しんでいるのか。インタビュー後編では、その魅力やオススメの選手を聞いた。

■ベテラン捕手の貢献&有望外国人

僕が最近ファーム観戦で楽しみにしているのが、大野奨太を見ることです。2017年オフにフリーエージェント権を行使して日本ハムから中日に移籍し、現在35歳の捕手です。正直、二軍に置いておくレベルの選手ではないと思います。

聞けば、投手陣からの評判がすごくいいらしいんですよね。新聞記事を読んでも、大野のことを褒めているピッチャーがたくさんいます。

実際、若手ピッチャーを育てるためには、いいキャッチャーがいないと難しいじゃないですか。中日では近年ピッチャーが順調に育ってきていますが、その裏では大野と武山真吾が若手を育成してくれていたんだと思います。武山は2019年限りで現役引退しましたが、今は大野が一手に引き受けてくれていますね。

中日のファームは、育成契約で獲ってきた外国人選手が育っていく場所でもあります。現在の一軍で言えば、キューバ出身のアリエル・マルティネス、ブルペンを支えるジャリエル・ロドリゲスやライデル・マルティネスも育成出身です。

ちなみに僕はジャリエルを初めて取材した日本人メディアだと思います。2020年に来日した際、春季キャンプで2月1日に取材に行きましたからね。「焼肉が美味しくてしょうがない」と話していました(笑)。1年目から一軍の戦力になりましたし、思い出深い選手の一人です。

そして今、次の主力を狙っているのが育成選手のルーク・ワカマツです。日系アメリカ人で、シアトル・マリナーズで監督を務めていたドン・ワカマツさんの息子です。内野手で、バッティングではいい感じで打球の角度がついているんですよ。ショートやセカンドを守る内野手で、中日にはあまりいないタイプなので活躍を楽しみにしています。

■北海道出身の超"レア"選手

日本人の若手選手で言うと、竹内龍臣という右ピッチャーを推しています。変わり者で、北海道生まれ北海道育ちなのに中日ファン。札幌創成高校という進学校出身で、中日の選手だった遠田誠治監督が球団に売り込んで2019年ドラフト6位で入団しました。

ちょうどその年、「ドラフトで中日に指名された選手全員を入団前に取材しよう」という企画が名古屋の雑誌であり、僕が竹内を担当することになったんです。北海道の選手で取材ルートがなく、交渉から頼まれました。札幌創成高校に電話したらタイミングがうまく合わずに取材できなかったけれど、本人と電話で少し話をして、数カ月後の春季キャンプで挨拶に行きました。

でも、ルーキーだったからか無理をしてしまい、右肘の靭帯を痛めてトミー・ジョン手術(側副靱帯再建術)を受けることになりました...。1年目が終わった2020年オフから育成契約になりましたが、高校生で獲ってきているので長い目で見てほしいと思いますね。まだ二軍でも登板していないので、投げる姿を見られたら超レアな選手です。

■グッズがつないだ"縁"

僕は宮崎県に生まれながら、祖父、父の"英才教育"で中日ファンになったという話を前編でさせてもらいました。

自分にも3歳になる娘がいて、お弁当にはドアラのイラストが描かれたおかずカップを絶対使っています。娘には「中日ファンになれ!」と強制はしませんが、外堀だけは埋めていって、逃げたくなったら逃げていいというスタンスです。まだ中日や野球についてはよくわかっていないみたいですけど、自宅にはドアラの人形があり、とりあえずドアラのことは好きになっていますね(笑)

僕自身、グッズを集めるのが好きで、極力いいものを買ってさりげなく身に着けています。実は今日履いている白い靴下も、ワンポイントでドアラが入っているんですよ。

グッズの縁で特に応援したくなった選手もいて、2019年のドラフト3位で入った石森大誠です。

「独立リーグの火の国サラマンダーズにすごいピッチャーがいるらしいですよ。左で150キロ以上出るらしいから、中日に入ってほしいですよね」

中日ファンの編集者とそう話していたら、本当に入ることになりました。ドラフト直後に火の国サラマンダーズが指名記念Tシャツを発売したので、これは買うしかないと思って購入したんです。

そうしたら感謝の意を伝える手紙が同封されていて、ちょっと感動しちゃいましたね。こういう手がかかることは、なかなかできないじゃないですか。それで石森を応援しようという気持ちが強くなり、中日に入団後、通販で石森のユニフォームを買ったんです。今、左の中継ぎは中日の課題なので、今シーズンのどこかのタイミングで上がってくると思っています。

ドラゴンズ試合で石森大誠選手のタオルを掲げるカルロス矢吹
ドラゴンズ試合で石森大誠選手のタオルを掲げるカルロス矢吹

■スタジアムグルメに「色」が出る

そのほかに野球観戦で楽しみにしているのがスタジアムグルメです。各地のスタジアムに行くたびに全部食べています。僕はもともと物事を比較するのが好きで、こんなにわかりやすく各球団のカラーが出るところはないですからね。

今年の僕の球場飯のテーマは、「ウクライナ紛争および、円安に伴う原材料の高騰に各球団がどう対応しているか」。実際に食べ歩くと、めちゃめちゃわかりやすく差が出ています。

例えば千葉ロッテは親会社が食品のメーカーだから敏感で、佐々木朗希の「大船渡産サンマ弁当」でさえお値段据え置きで、中身のグレードを少し落としています。一方、巨人はお値段を上げてでもグレードを維持する。球団のカラーがバシッと出るじゃないですか。

中日は...物はいいのに売り方がいまひとつなんです。例を挙げると、ナゴヤドームの2階コンコース、バックスクリーン裏にある「焼き鳥とりしげ」では元選手の彦野利勝さんが1日店長を務めていることがあるんですよ。焼き鳥を買えばサインを買いてくれたり、写真を撮ってくれたりするんです。

でも、メディアに取り上げられることはあまりなくて...。中日ファンからすれば、彦野さんに会えるなんてめちゃめちゃうれしいじゃないですか。もっと推していけばいいのにと思っていたので、今回の機会に紹介させてもらいました(笑)

スタジアムグルメはファームのナゴヤ球場にもあって、名古屋を代表する料理の1つ、あんかけパスタが売られています。食べてみると、普通に美味しいんですよ。なぜか露出は多くないので、僕が推薦させてもらいます。ぜひナゴヤ球場に行って、あんかけパスタ片手に野球観戦をしてみてください!

インタビュー/構成=中島大輔 企画=This

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