映画パーソナリティ・伊藤さとりが第96回アカデミー賞の行方を占う「今年の作品賞候補作10本は非常にバランスの取れた映画ぞろい」

「第96回アカデミー賞授賞式」はアメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催
「第96回アカデミー賞授賞式」はアメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催

Kate Noelle Kernutt / Richard Harbaugh / (c) A.M.P.A.S. (第95回アカデミー賞授賞式より)

3月11日(月)(日本時間)に発表される第96回アカデミー賞。今年もWOWOWプライムで「生中継!第96回アカデミー賞授賞式」として同時生中継される。今回から作品賞の選定に新基準を設けるなど、社会の変化を色濃く反映した候補作が並ぶ中、日本からも宮崎駿(※「崎」は正しくは「立さき」)監督作「君たちはどう生きるか」が長編アニメ映画賞候補になるなど3作品がノミネートされ、見どころも多い。

今回、映画パーソナリティの伊藤さとりさんに「今までの的中率は8割」という受賞予想と、アカデミー賞をショーとしてより楽しむ方法を聞いた。

映画パーソナリティの伊藤さとりさんは日本作品にも期待を寄せる
映画パーソナリティの伊藤さとりさんは日本作品にも期待を寄せる

■作品賞は新基準に合った「バービー」ほか3作が台風の目

2025年のアカデミー賞から、作品のテーマ・スタッフ・キャストに一定数以上の人種・性別などのマイノリティーを含む、 という条件が設けられ、それを満たした作品のみが作品賞のノミネート対象となります。よって徐々に変化が目に見えて分かるようになり、今年の作品賞候補作10本は非常にバランスの取れた映画ぞろいです。

中でも裏の本命として注目なのは「バービー」。ジェンダーへの固定概念を、ユーモアを交え問う作品で新基準にぴったりです。加えてプロデュースも兼任した主演のマーゴット・ロビーと、グレタ・ガーウィグ監督が、それぞれ主演女優賞と監督賞にノミネートされていないことに、助演のライアン・ゴズリングが「失望している」と声明を発表したことも、本作に作品賞を取らせる追い風になりそうです。

対抗馬は、13部門と最多ノミネートの「オッペンハイマー」。原子爆弾の開発に成功した物理学者のオッペンハイマーを描き、日本人としては複雑な思いを抱く映画ですが、迫力あるIMAX撮影にもこだわった、アカデミー会員好みの王道大作です。大穴は、1人の女性が無知な幼児の脳から自立した大人の知的な女性になるまでをエマ・ストーンが熱演し、アート色の濃い「哀れなるものたち」でしょう。

監督賞はおそらく、「オッペンハイマー」のクリストファー・ノーラン対「哀れなるものたち」のヨルゴス・ランティモスの一騎打ちになりそうです。総合力の高いノーランと芸術的でとがったランティモス、どちらが取ってもおかしくないです。

■俳優部門では泣かせるスピーチに期待

助演男優賞ではロバート・ダウニー・Jr.が本命です。「オッペンハイマー」では、彼と分からないほど変貌しての熱演でした。「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のロバート・デ・ニーロも彼にしかできない素晴らしい演技でしたが受賞経験がありますし、今回はダウニー・Jr.に初のオスカーが行きそうです。

主演男優賞は、長年助演としての名演で幾多の映画を支えてきたポール・ジアマッティが、「The Holdovers(原題)」で嫌われ者の教師を味わい深く演じて、俳優が大半を占めるアカデミー会員の支持を得るでしょう。「オッペンハイマー」のキリアン・マーフィには悪いですが、ジアマッティが名スピーチをして客席が大喝采、という画が見たいですね。

主演女優賞は前述したエマ・ストーンが有力視されていますが、彼女は受賞経験者。今回は「ナイアド~その決意は海を越える~」のアネット・ベニングが、その美貌をかなぐり捨てて64歳でフロリダ海峡を横断した実在のスイマーを見事に体現していたので、彼女に1票入れたいところ。「落下の解剖学」のザンドラ・ヒュラーも素晴らしかったですが、この映画は脚本賞で取ると思います。

助演女優賞には「ナイアド-」でベニングと最高のバディを組んだジョディ・フォスターがいますが、「The Holdovers(原題)」のダヴァイン・ジョイ・ランドルフが、作品のスパイスになるキャラクターを魅力的に演じており、アカデミー賞の前哨戦といわれるゴールデングローブ賞を受賞したので順当に取るのではないでしょうか。

■日本の作品は果たして栄冠を手にできるか?

日本からは役所広司出演の「PERFECT DAYS」が国際長編映画賞にノミネートされていますが、ここは作品賞候補にもなっているナチス高官夫妻を描いた「関心領域」が時節柄、戦争の愚かさを問うという意味でも堅そうです。役所さんは会場に行くと思うので、レッドカーペットは楽しみですね。

視覚効果賞にノミネートされた「ゴジラ-1.0」は、他作品に比べ圧倒的低予算という逆境をはねのけ候補になった勢いで、必ず受賞すると思います。

そして長編アニメ映画賞は、宮崎駿(※「崎」は正しくは「立さき」)監督の「君たちはどう生きるか」で決まるのではないでしょうか。変幻自在なキャラクター造形力をいかんなく発揮し、世界中に尊敬される監督の反戦映画でもあるので、ここは間違いないと思います。

今回は授賞式当日までに日本で見られる作品も多いので、ぜひなるべくご覧になって予想しながら中継を見ることをお勧めします。3月29日(金)公開の「オッペンハイマー」に関しては、映画を見られずとも人物について調べておくと、より楽しめると思いますよ。

(プロフィール)
いとう・さとり●邦画、洋画問わず年間500本以上の映画を鑑賞。映画舞台挨拶や完成披露会見などのMCを数多く担当している。「ぴあ」「otocoto」でのコラム連載や、YouTube「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」「めざまし8」(フジテレビ)「ひるおび」(TBS)での月2回の生放送の映画コーナーなど、幅広いメディアで映画を紹介。また、日刊スポーツ映画大賞、日本映画批評家大賞、日本映画プロフェッショナル大賞ほかの審査員も務める。

取材・文=magbug

この記事の全ての画像を見る

放送情報【スカパー!】

生中継!第96回アカデミー賞授賞式
放送日時:3月11日(月)7:00~
放送チャンネル:WOWOWプライム

第96回アカデミー賞授賞式ダイジェスト
放送日時:3月17日(日)20:00~
放送チャンネル:WOWOWプライム

※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

関連記事

記事の画像

記事に関するワード