TVアニメ第3期の放送が待ち遠しい「転スラ」の魅力を評論家が分析「異世界転生的要素とゲーム的要素の両方を楽しめる」

現代日本で暮らしていた青年が、スライムに転生。魔物が存在するファンタジックな異世界で仲間と共に成長する姿を描く人気アニメシリーズ「転生したらスライムだった件」。「転スラ」という略称でファンから愛されている同作は、2013年より発表のweb小説が原作。TVアニメも、第3期が2024年春に連続2クールで放送されることが決定し、ファンの期待も最高潮に達している。そんな「転スラ」の魅力をアニメコラムニストの小新井涼さんに分析してもらった。

なんらかの原因で命を落とした若者が、剣と魔法の世界に転生。そこで前世となる現代日本での記憶をベースに大活躍...。昨今のライトノベルやコミック、アニメなどで高い人気を誇るジャンル"異世界転生ファンタジー"では、貴族や魔法使いの子どもなど、主人公が社会的ステータスのある家系に人として転生するケースが主流だった。しかし、「転スラ」では、ゲーム世界で最弱とされることの多いモンスターのスライムとして、新たな一歩を踏み出す。

「剣と魔法の異世界が舞台のゲーム世界に慣れ親しんでいる方々にとっては、主人公がスライムという、人ではない上に最弱な存在に転生し、一国の王を目指すという設定に新鮮さを感じたと思います。また、主人公が、前世でゼネコンに勤務していたという設定を生かし、魔物たちが種族の壁を越えて国を興すという『建国系』とも呼べるストーリーが展開するのが大きな魅力だと思います」

前世で通り魔から後輩をかばい、命を落とした主人公。異世界でスライムに転生した彼は、勇者によって洞窟の中に300年にわたって封印されていた天災(カタストロフ)級のドラゴン、ヴェルドラと友達に。「リムル」という名をくれた彼を解放するために「食べる」など、常に他者のためを思って行動するという優しさにあふれたキャラクターとして描かれている。

「多くのゲームでは、敵として倒されるゴブリンやオーク、オーガといったモンスターに名前を与え、かけがえのない仲間とするリムルですが、彼らを救うためならば、何万人の命をいけにえにして、魔王にもなる、という愛情の深さと、清廉潔白な正義のヒーローだけではない部分もしっかり描いたところも大きな魅力だと思います」

リムルが愛する仲間たちも、皆個性派ぞろい。中でも、角と牙を持ち、戦いを好む大柄な人型種族・大鬼族(オーガ)から進化した鬼人族たちは、2022年公開の『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』でもメインキャラクターとして描かれるほどの人気を誇っている。

「ベニマルをはじめ、美形キャラぞろいの鬼人族もすてきですが、個人的には蜥蜴人族(リザードマン)の戦士長・ガビルが大好きです。いわゆる『モブキャラ』的扱いをされることも多い爬虫(はちゅう)類系のモンスターにもスポットが当たり、かつ内面の成長過程も丁寧に描くところも『転スラ』ならでは、と感じています」

TVアニメ本編以外にも、番外編も充実している「転スラ」シリーズ。中でも、スピンオフアニメ「転スラ日記」では、仲間たちと畑仕事にいそしんだり、日本の夏祭りを再現したりといった、穏やかな日常がつづられる。

「本編が大河ドラマ的な大作だとすると、『転スラ日記』は、その行間を埋めるような日常が四季の移り変わりと共に描かれていきます。本編よりもゆったりのんびりしたストーリーなので、家族全員で楽しめる作品だと思います」

昨今、海外でも圧倒的な人気を誇る日本のアニメ。もちろん「転スラ」も例外ではなく、世界各国で多くのアニメファンから高い評価を得ている。

「日本のアニメを視聴する層は、ゲームにも慣れ親しんでいることもあって、『転スラ』に登場する『スキル』と呼ばれる一種の特殊現象発動システムや、リムルを導く『大賢者(エイチアルモノ)』といった設定をすんなり理解できることも、海外の『転スラ』人気を支える要因だと思います」

2024年4月より放送開始のTVアニメ第3期では、神聖法皇国ルベリオスとリムル率いるジュラ・テンペスト連邦国による対立が激化。リムルと、因縁の相手でもある神聖法皇国ルベリオスの法皇直属近衛師団筆頭騎士にして西方聖教会聖騎士団長、ヒナタ・サカグチとのダイナミックなバトルシーンが描かれることが期待される。

「第1期から第2期まで、全48話＋3話というボリュームなので、『第3期から見始めるには敷居が高いな』と思われる方もいらっしゃるかもしれません。そんな方には、リムルの中にいる暴風竜・ヴェルドラと、炎の上位精霊・イフリート視点で本編映像を振り返る、第1期・最終話と、第2期・第36.5話がお薦めです。親子そろって楽しむことができる作品でもありますし、今までファンタジー系の作品に触れたことがない方でも、ゲーム的・異世界転生的タイトルの魅力を味わうには最適な作品ですので、ぜひ、この機会にご覧になっていただきたいです」

取材・文＝中村実香

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